« 『ジャンケン文明論』を読む | トップページ | 『おいしいアンソロジー 喫茶店』を読む »

2024年8月10日 (土)

『戦前日本の「戦争論」』を読む

1940(昭和15)年に組閣された第2次近衛内閣の閣僚は、
 総理大臣 近衛文麿
 外務大臣 松岡洋右
 内務大臣 平沼騏一郎
 陸軍大臣 東條英機
 海軍大臣 及川古志郎
ら。

この内閣が設けたのが、総理大臣直轄の総力戦研究所
その研究所において、帝国が米国に戦いを挑んだ場合のシミュレーションを行っている。
米国が原爆を完成させることまでは予測できなかったが、
 緒戦は勝利する
 長期戦になる
 ソ連が参戦する
こと、そして敗戦するのは帝国であることを史実通りに予測している。

その研究結果は、首相をはじめとする閣僚・上級官僚・陸海軍上層幹部を前にして発表されている。
帝国が英米に戦端を開く16ヶ月前のこと、すなわち、帝国敗北の60ヶ月前のことである。

Photo_20240729173801
こんな飯屋で読み始め。

本書の副題は、
 「来るべき戦争」はどう論じられていたか

〝どう論じられていたか〟を、本著者は下記の出版物から拾っている。
本書の目次にある表記通りに並べると、
 われ等若し戦はば 昭和八年八月発行/講談社
 米國海軍の眞相  昭和七年十一月発行/創造社
 日米果して戦ふか 昭和六年八月発行/春秋社
 昭和十年頃に起る日本對世界戦争 昭和七年五月発行/日月社
 日本は勝つ 昭和十八年五月発行/高山書院
(上記本の著者は、今の我々には、とうに忘れられたヒトたちで、退役軍人や軍事を専門とする評論家ら)

本夕、読了。

どの本も、米国の経済力・科学力・工業力が帝国を大きく上回ることを認めていて、開戦を避けるべきという論調なのは同じ。
また、どの本も、米国が帝国を空襲することについて、史実に近い予測をしている。
よって、フィリピン・南洋諸島・小笠原が戦略上の重要地となることも同じように論じている。

実際に、米軍が帝国へ初空襲したのは、'42(昭和17)年4月。
その翌年発行の 『日本は勝つ』 に書かれているのは、
 なあに、東京が焼けても、日本にはまだ
 大阪もあれば、名古屋もあるではないか。
 といったぐらいな、太い神経の持ち主に
 ならなければ、米英相手の大戦争は勝ち
 ぬけるものではない。

« 『ジャンケン文明論』を読む | トップページ | 『おいしいアンソロジー 喫茶店』を読む »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 『ジャンケン文明論』を読む | トップページ | 『おいしいアンソロジー 喫茶店』を読む »