『旅をする木』を読む
ロシア・カムチャツカ半島の最南端にあるのがクリル湖。
面積は支笏湖とほぼ同じ。
この湖からオホーツク海に注ぐ川をサケが遡上する。
カムチャッカのヒグマは そのサケを食う。
誰が教えたのか、
星野自身が考えたことなのか、
「遡上してくるサケを狙っているので、この時期のヒグマはヒトを襲わない」
と、クリル湖畔に設営したテントで一人寝したのが本著者の星野道夫。
しかし、ヒグマが何を食おうとヒグマの気分。
星野道夫はテントを壊され、シュラフを裂かれ、ヒグマに食われる。
'96年のこと。
星野、43歳。
こんな喫茶店で読み始め。
北海道に憧れ、やがてアラスカに憧れ。
憧れは、現実に。
アラスカに土地を買い、家を建て、その地に妻をむかえ、子を育てる。
写真を撮り、文章を書き、本を作り、TV番組を企画し、世界中を旅する。
それを33編のエッセーに。
本夕、読了。
神田の洋書専門の古本屋で、アラスカの写真集を手に入れる。
その写真集に載っていた北極圏内の村で、19歳の彼は3ヶ月暮らす。
白夜の地で、クマを狩り、アザラシを狩り、トナカイを狩り・・・
14年後、ある偶然から、彼はその写真家と会う。
「そうか、私の写真集が君の人生を変えてしまったんだね・・・
で、後悔しているかい?」
星野は こう書く。
人生はからくりに満ちている。
無数の人々とすれ違いながら、私たちは
出会うことがない。
その根源的な悲しみは、言いかえれば、
人と人が出会う限りない不思議さに通じ
ている。
コメント