『ド・ローラ節子の和と寄り添う暮らし』を読む
20世紀の終わりを見ることなく逝ったピカソ(1881ー1973)だが、そのピカソに〝20世紀最後の巨匠〟と言わしめたのが、フランス人画家のバルテュス(1908ー2001)。
スイス レマン湖の東の小さな村の標高900メートルにあるグラン・シャレ(山荘)が、バルテュスの終の棲家。
山荘とはいうがスイス最大の木造建築物で、彼が住まいとする前は、部屋数50・窓数150のホテルだった。
このグラン・シャレでバルテュス と暮らし、今現在も ここに住むのはバルテュスの34年下の妻のセツコ・クロソフスカ・ド・ローラ(Setsuko Klossowska de Rola )。
彼女もまた画家。
セツコ・クロソフスカ・ド・ローラを、彼女は〝節子くろそふすかどろうら〟と署名する。
スイスでの日々を和装で過ごす日本人。
こんなファストフード店で読み始め。
和装で花を摘み、食卓を飾る。
ジャノメの日傘で、来客を迎える。
そして、こんな色・模様の着物を着る。
・トルコ石色の綸子(りんず:絹織物の一種)地に黒線で
さらりと書かれた流水
・岩紫紅(いわしこう:赤紫色の岩絵の具)地に浅黄群青
(あさぎぐんじょう:青色)色の樅(もみ)の木と うす
色の家の模様
本夕、読了。
節子が和装で過ごすのは、バルテュスの好みゆえ。
バルテュス自身も、和装を日常着としていた。
夜明け前にラクダの背に揺られて宿を出て、白足袋で降り立ったのは、朝焼けのサハラの砂の上。
深紅の紗(しゃ・うすぎぬ:絹織物の一種)に白い帯。
着物と同色の和の日傘をさして。
そして、節子は こう書く。
昇りゆく日の光は赤い衣に吸い込まれ、私の身体を火照らせて。
夢世か現世か・・・
と。
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