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2024年3月 2日 (土)

『大名格差』を読む

北村桃児(きたむら とうじ)作詞の、
 歌謡浪曲『あゝ松の廊下』
には、以下のセリフが入る。

 放してくだされ梶川殿
 五万三千石
 家をも身をもかえりみず
 上野介(こうずけのすけ)を討つは
 将軍家の御威光と役職を笠に着て
 私利私欲に走る人非人を斬るためじゃ
 その手を放して下され梶川殿

北村桃児とは、三波春夫の作詞家としてのペンネーム。
 家をも身をもかえりみず
に吉良上野介を討とうとするのは、播磨赤穂藩 五万三千石の藩主 大名 浅野内匠頭 長矩󠄁(あさの たくみのかみ ながのり)。

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こんな飯屋で読み始め。

斬られた吉良上野介は四千二百石の旗本。

だが、官位は、
 内匠頭 従五位下(じゅごいのげ)(注)
 上野介 従四位上(じゅしいのじょう)
と、上野介が上。

 将軍家の御威光と役職を笠に着て
というセリフがこれ。

衣装、その色、江戸城入城の際にカゴから降りる場所に至るまで、大名には細かい規則で差が付けられていた。

本夕、読了。

NHK大河ドラマ『光る君へ』の舞台は平安中期。
役者も それを観る方も現代人。
なので、演出家は、
 「行っちゃおゥかなァ」
などと、平安貴族を演じる役者に現代人口調で話させる。
が、「死ぬ」を「みまかる」と言わせるところは、やはりNHK、時代考証に抜かりはない。

ところで、裳(も:平安時代の和式ロングスカート)に隠れて あらわには見えないが、まひろ(紫式部)ら平安女性は片膝をついて座っている。
いわゆる正座は もっとずっとあとの座り方で、ここにも確かな時代考証。

男は近世までアグラ。
徳川幕府は、将軍の前では大名・旗本を含む臣下の者に正座を強いた。
仮に将軍に手を出そうとしても、この座り方ではひと呼吸遅れる。

(注)

官位職を言うとき、〝従〟を〝じゅう〟と発音しては笑われる。
この場合、〝従〟の発音は〝じゅ〟。

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