『鉄道ひとつばなし』を読む
著者は政治学者。
初めに、
学者が本業を放り出して、「趣味」の本を出すとは何事
かという批判は覚悟している。
と書き、続けて、
私にとって、鉄道は単なる趣味ではない。 それは経済
史や経営史の研究対象となるばかりでなく、私の専門で
ある政治思想史にとっても、テキストを読むだけでは見
えない重要な手掛かりを与えてくれる。
と書く。
そして序章が、
思索の源泉としての鉄道
鉄チャン・鉄子の好むトリビアが並べられているのではなく、広く深い知識と、整然とした頭の使い方で本書は書かれている。
こんな喫茶店で読み始め。
大正天皇は その皇太子時代(1900(明治33)年~1912(大正元)年)に、沖縄を除く全ての道府県庁所在地を回っている。
1907(明治40)年、皇太子は 開通20日後の山陰本線に乗っている。
その時の、鳥取県の倉吉駅のある自治協会に残る記録が以下。
奉迎人 倉吉駅到着は遅くも御着車時刻一時間前
(九時五十一分)とす もし同時刻を後れば構内
に入ることを得ず
つまり、
皇太子を乗せた列車は十時五十一分に倉吉駅に着くから、
歓迎に選ばれたものは、その一時間前の九時五十一分まで
に駅構内の指定場所に整列せよ。
それに遅れた者は駅構内に立ち入ることを禁ずる。
数字をきれいに、九時五十分としても良さそうなものだが、一時間前は、あくまでもキッカリ一時間前。
時刻の五十一分は、あくまでも五十一分。
鉄道と皇族の硬い関係が見える。
本夕、読了。
ところで、本書初版は2003年9月だが、今も版を重ねている。
なお、執筆時、某大学助教授だった著者は、すでに名誉教授。
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