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2024年2月

2024年2月24日 (土)

『文豪のすごい語彙力』を読む

本書で取り上げているのは、芥川龍之介の〝的皪(てきれき)〟から、谷崎潤一郎の〝懇親〟までの63人、63語。

海上自衛隊の行進曲は、〝軍艦マーチ(軍艦行進曲)〟。
米国海軍なら、〝錨を上げて〟。
 出航用意!
 そして、次に続くのは、
 舫い(もやい)を解け!

この、舫いを解くことを解纜(かいらん)という。
檀一雄は、『リツ子 その愛・その死』で、
 船は解纜したようだった。
 丸窓が閉ざされているので皆目外は見えないが、
 波の動揺がしきりと感じられてくる。
と、綴っている。

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こんな飯屋で読み始め。

〟は訓では、〝ともづな〟と読む。
〝ともづな〟は、〝もやいづな〟のこと。

本夕、読了。

〝ともづな〟は〝艫綱〟とも書き、〝艫(とも)〟は船尾のこと。
なので、〝ともづな〟の辞書の説明は、〝船尾から出して船を陸につなぐ綱〟。

本書者は、
〝ともづな〟の〝とも〟は、〝ともだおれ〟、〝おともする〟の〝とも〟と同じで、〝複数〟の意。であると説明する。
船と岸は、複数の綱で固定するからだ、と。
これも一理ある。

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2024年2月18日 (日)

『寄書の世界史』を読む

「寄書」とは、〝奇〟跡 の書でも、〝寄〟せ書きの書でもない。
「寄書」とは、〝奇〟妙な書 、〝奇〟天烈な書のこと。

国内で出版される書籍(CD・DVD なども含む)は、決められた部数を国立国会図書館におさめなければならない(国立国会図書館法:納本制度)。
国は、その販価の50パーセントを納入者に補償する。
誰でも考え付く悪知恵が、以下。
外国文字をランダムに印刷しただけの、執筆も編集工程もない書籍を納本し、50パーセントの補償でも十分過ぎる益を得る出版社が現れた。
こんなのは〝寄書〟といえるだろう。

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こんな飯屋で読み始め。

16の寄書が紹介されている。
内、ひとつが、江戸の終わり頃の椿井文書(つばいもんじょ)。
拙ブログでも 『椿井文書』を読む として記事にしたが、近畿の20の市町史編纂者が、これにコロッとだまされている。
『椿井文書』は、つい最近まで寄書ではなかった。

マルコ・ポーロの『東方見聞録』。
それには、黄金の国ジパングが記載されている。
『東方見聞録』は、世界史に残る紀行の書。
今現在でも、寄書とはいわないだろう。

紀伊國屋やジュンク堂には、『円周率1000000桁表』とか『素数表150000個』とか『自然対数の底1000000桁表』とかが売られている。
書かれている数字は正しい。
が、寄書(だと思う)。

本夕、読了。

誰でも電卓を持てるようになった頃でも、理工学書の巻末や理科年表には、平方根表や対数表や三角関数表がのせられていた。
丸善の『五桁対数表』は今でも版を重ねている。
これらは寄書とはいわない(だろう)。

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2024年2月12日 (月)

『地図バカ』を読む

電気事業法では、ある規模以上の発電設備などは、その設置を国に申請して許可を得なくてはならないとしている。
その申請資料には、設備スペックとともに、設置場所を示した国土地理院の5万分の1の地形図を添付することになっている。(注)

その添付する国土地理院の5万分の1の地形図の『室蘭』は、つまらない。
地図全体の99.9パーセントは海で、右上隅にほんの少しだけ陸地。

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こんな喫茶店で読み始め。

 1マイルは1760ヤード
 1ヤードは3フィート
 1フィートは12インチ
と、ヤード・ポンド法は10進法ではない。

バングラデシュは英国に植民されていたので、ヤード・ポンド法の国。
だから、バングラデシュ全国図の縮尺は、63万3600分の1と中途半端。
この縮尺だと、地図上での1インチが1マイル(哩:陸里 1マイルは1609メートル)となる。

宗首国だった英国では、50年前には、地図のメートル法への置き換えが終わっている。

本夕、読了。

サンスケと略称される物差しがある。
三角スケールのことで、6種の縮尺、多くは1/100、1/200、1/300、1/400、1/500、1/600 に対応する目盛りが切ってある。

ところで、建設図・構造図などはA1サイズで出図されることが多い。
この大きさでは、デスク上で使うには不便なので、これをA2やA3にダウンサイズコピーすることが多い。
例えば、元図がA1の図面をA2に落とすと、縮尺の分母は元の√2倍になる。
1/100の図面なら、1/141の図面になる。
なので、上記の目盛りの三角スケールは使えない。

図面検討会と称する会議の場に、胸ポケットにこんな三角スケールをさして出席してはマヌケ。
良くしたもので、ダウンサイズコピー用の三角スケールがある。
それを、我々はゼロックススケールと呼んでいた。

多分、ゼロックス社の社員は このことを知らないと思う。

(注)
5万分の1の地形図の『室蘭』を添付した資料を持参して、札幌の第1合同庁舎の経産局に通う仕事をしたことがあった。
今現在のことは知らないが、その当時の経産局の担当者は、添付する地図は国土地理院の5万分の1の地形図の『室蘭』でなくともいいと言っていた。

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『自転車に乗る前に読む本』を読む

ヒザに故障をかかえたランナーでも、自転車には乗れる。
ペダルを回す動作は、ヒザへの負荷が小さいから。

著者は生理学者。
その専門知識を背景にして書かれた本書の副題は、
 『生理学データで読み解く「身体と自転車の科学」』

本書には、健康に好影響を与える自転車の走らせ方が書かれている。

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こんな喫茶店で読み始め。

自転車のペダルを回す1分間の回転数(rpm)をケイデンス(cadence)と呼ぶ。
血圧の単位は水銀柱ミリメートル(mmHg)だが、それを省略し、
 上が120、下が70
などと数値のみを言うのが普通。
ケイデンスも同様。
普通、数値のみを言う。
以下、数値はケイデンスを示す。

トライアスロン競技者は、80~90
対し、
エネルギー消費量が最小になるのは、70
筋肉の疲労が最小になるのは、80~90

競技者は、エネルギーの消費量よりも、脚の疲労のしにくさを優先する。
と、思いきや、自転車を専門とする競技者は、エネルギーの消費効率の悪化も、筋肉の疲労も増えるのを分かった上で、90から110で走る。

本朝、読了。

競技者でない者は、70も回せない。
著者は、まず65を目標に、と提案する。

著者の学位論文は、
『自転車運動に対する身体適応および日常的自転車使用による健康づくりの可能性』
が、著者、自転車には乗らない。
健康づくりは、ジョギングで。
通勤は、エンジンバイク。

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2024年2月 9日 (金)

『ぼくらの近代建築デラックス!』を読む

建築基準法施行令第88条は、地震力を規定している。
〝標準〟という前提付きで書かれているその数値の最低値は、剪(せん)断力係数で0.2。
この0.2は、建物重量の20パーセント相当の力のこと。
建物の重心位置に 水平方向にこの力をかけても建物に致命的な損傷を生じさせない設計をするための目安。
この0.2には根拠がある。
関東大震災で倒れた墓石の調査結果。

新館建設のため1968年(昭和43年)に解体されたのは、1923年(大正12年)竣工のフランク・ロイド・ライト 設計の帝国ホテル(ライト館)。(注)
このライト館の完成披露パーティーの その当日に起きたのが、関東大震災。

この地震に、ライト館は耐えた。

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こんな喫茶店で読み始め。

先月 直木賞を受賞した万城目学(まきめ まなぶ)と、推理小説作家の門井慶喜(かどい よしのぶ)が、大阪・京都・神戸・横浜・東京・台湾の近代建築を訪ねる。

1931(昭和6)年竣工のモロ近代建築に外側だけ化粧をほどこした大阪城天守から、1904(明治37)年竣工の横浜正金銀行(現:神奈川県立歴史博物館)といった落ち着きと品の良さを感じさせる建物まで67棟。

文化史学を専攻した門井の近代史と建築の知識が広く深い。

本夕、読了。

東京・横浜・神戸にある近代建築は、震災と戦災をくぐってきているので それだけでも貴重。
前調べは旅をつまらなくするというヒトもいるけれど、二人とも予習、あるいは再訪しての確認十分。
訪れるのは、ヒトが作ったモノ。
かつ、作ったヒトは優秀。
予習なしでは、ポカンと口を開けるだけだろう。
私がそれ。
ポカンと口を開けて読み進めた(^^;

(注)
『フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群』として、世界遺産に登録されている建物が8棟ある。

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2024年2月 4日 (日)

『将棋カメラマン』を読む

将棋は指し、碁は打つ。
でも、
 将棋指し も棋士
 碁打ち  も棋士
ところで、
 チェス  だとプレーヤー
 麻雀   だと雀士
 丁半   なら緋牡丹お竜、藤純子
 ポーカー ならルーヴル美術館のラ・トゥールの絵、
     『ダイヤのエースを持つ いかさま師』

本著者が撮るのは、将棋指し。
副題は、
 大山康晴から藤井聡太まで
 「名棋士の素顔」

その写歴は50年。

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こんな喫茶店で読み始め。

演劇場やコンサート会場では、写真撮影は原則禁止。
そんな世界の、例えば歌舞伎界には舞台専属カメラマンがいる。
専属カメラマンを持つオーケストラもある。

将棋の勝負の場にいるのは、シャッター音を消し、ストロボを発光させず、動きを殺したカメラマンの著者。

本夕、読了。

朝刊には、将棋・囲碁の観戦記が載る。
技術的なことは全然わからないが、盤外を描写した ほんの十数文字が光っている日がある。

川端康成は、自身が経験した碁の観戦を『名人』という小説に仕立てている。
書かれているのはヒト、二十一世本因坊秀哉。
先月の4日に亡くなった篠山紀信が撮ったのもヒト。
本著者の撮るのもヒト。
 対戦中の棋士
 麻雀卓を囲む棋士
 バイオリンを弾く棋士
 酒場で飲む棋士
 旅先の街路を歩く棋士
 素っ裸で鳥取砂丘に立つ棋士
 教会堂で祈りをささげる棋士
 テニスに興じる棋士

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