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2024年1月27日 (土)

『「悪所」の民俗誌』を読む

渋谷区松濤(しょうとう)地区に、コンビニはない。
マックもスタバもない。
ここは、商売っ気を微塵も感じさせない歴史ある高級邸宅街。

松濤の南に接続して あるのが、かつての色町 円山(まるやま)。
今はラブホテル街。
書名の「悪所」は、かつての円山のようなところをいう。

著者は社会学者で桃山学院大学で教え、学長も務めた沖浦和光(おきうら かずてる)。
副題は、
『色町・芝居町のトポロジー』

トポロジーとは位相幾何学のことだが、ここでは、〝連続している〟くらいの意味だろう。

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こんな喫茶店で読み始め。

著者は、「悪所」の特質を
 ・匿名性の高い非日常的空間
 ・新しい文化情報の発信・収集の場
 ・誰でも出入りできる場
 ・混沌(カオス)性が増殖していく場
 ・遊女が理想形となる人倫秩序の転倒した場
 ・役者が表現する場
と、まとめる。
特に、最後の〝役者〟は、
 「漂泊する神人」の影が漂い
表現するのは、
 身に潜めた呪力
であると書く。

本夕、読了。

本書、平安の世まで時代をさかのぼる。
当時の記録から、天皇・法皇に寵愛を受けた局(つぼね:宮中に自室を与えられた高位女官)のなかには、出自が遊女の者がいたことを明らかにする。
〝遊女が理想形となる人倫秩序の転倒した場〟が、ここに見える。

悪所といえば、博打場もそうだろう。
が、著者は、博打場についてはひとことも触れていない。
博打が成立するには貨幣が回る世界が必要だが、本書が広げる世界は すでに貨幣経済の時代。
著者、おそらく、競馬・パチンコ・麻雀を知らないヒトなのだと思う。

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