『加害者家族』を読む
以前、新聞で読んだ記事。
車庫出し前進時、祖父が幼い孫をひき殺してしまう。
車庫入れ後退時、母親が幼い我が子をひき殺してしまう。
いずれも過失・事故。
ひかれたほうの孫・子は被害者だが、ひいたほうの祖父・母を加害者とは言いづらい。
不幸。
救いようのない不幸だが、責めるべき対象は自分自身のみ。
細く暗いが 歩むべき贖罪の道が見えないこともない。
そもそも、〝罪〟ではない。
ように思う・・・
こんな喫茶店で読み始め。
本書で扱っているのは、そんな意図しない過失・事故の話ではなく、故意の殺人。
殺されたほうには、ひとかけらの落ち度もない。
殺されたほうは被害者、その家族は被害者家族。
殺したほうは加害者、その家族は加害者家族。
被害者家族は もちろん不幸。
が、加害者家族にも大きな不幸が襲う。
著者はNHKの報道番組ディレクター。
書かれていることは著者自身の取材による。
被害者は 小学生5人(注)
内、2人死亡
加害者は、14歳、中学3年生
加害者家族宅の構成は、父・母・加害者・弟が2人
本夕、読了。
警察は加害者家族宅に起こるだろう不幸についても配慮する。
で、家宅捜索令状呈示の その前に、2人の弟を親戚宅に避難させることを提案・協力する。
それからの日々。
父親は苦しむ。
弟たちはどうなるのか。
誰が遺族に詫びに行くのか。
捨てきれない 何かの間違いであって欲しいという思い。
そんな父親に担当警察官は同情を示しながら、
「あなたたち家族への厳しいマスコミ報道、連日の調書取りなど
で、つらく苦しい気持ちはわかります」
そして、こう質問する。
「お父さん、2月10日と3月16日に殺された被害者の名前を
ご存知ですか?」
父親は、被害者たちの名前を知らずにいたことを指摘され愕然とする。
そして、自分たちは、加害者家族としての苦痛を決して口にしてはいけないことを知る・・・
(注)
1997年の神戸連続児童殺傷事件。
いわゆる、酒鬼薔薇聖斗(さかきばら せいと)事件のこと。
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