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2023年7月17日 (月)

『就職先は海上自衛隊』を読む

海上自衛官の3尉(初級幹部)への任官は、防大なり一般大なりを卒業後に広島の江田島にある幹部候補生学校での1年間の教育を終えた時点。
なお、さらにその後、実習幹部としての訓練を5ヶ月の遠洋練習航海で受ける。

〝かしま〟は、初めて女性自衛官の乗艦を可能とした練習艦。
この〝かしま〟の就役前は、女性自衛官は遠洋練習航海に参加できなかった。

127名の男性実習幹部とともに、〝かしま〟に実習幹部として乗艦して海自初の遠洋練習航海に出た女性自衛官は13名。
その13名の内のひとりだったのが、本書著者。
新造艦〝かしま〟が就役した1995年のことで、防大が初の女性卒業生を出す前の年。

著者は、一般大学文学部出身者。

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こんな喫茶店で読み始め。

本著者乗艦時の遠洋練習航海の航路は、西回りの世界一周。
 総航程 28000海里(52000km)
 総日数 157日
  航海 107日
  停泊  50日
寄港10ヶ国と12回の寄港は以下の順。
 シンガポール(シンガポール)
 ムンバイ(インド)
 アレキサンドリア(エジプト)
 イスタンブール(トルコ)
 ナポリ(イタリア)
 ルアーブル(フランス)
 ハンブルク(ドイツ)
 リスボン(ポルトガル)
 ノーフォーク(米国:バージニア州)
 バルポア(パナマ)
 サンディエゴ(米国:カリフォルニア州)
 パールハーバー(米国:ハワイ州)

・発光信号(光の長短で表したモールス信号)
・手旗信号
・旗旒(きりゅう)信号(国際信号旗の組み合わせ)
の三つの視覚信号の(発信能力はともかく)受信は、幹部自衛官に求められる能力。
幹部候補生学校で訓練され練習航海中も訓練されるが、この視覚信号の受診能力差が大きいことが大西洋航海中に問題視される。
で、リスボン入港直後に査定を行い、基準に達しない者は上陸禁止にするとの通達が出される。

著者は、能力差が大きく低い一人。
が、特訓、追試の結果、ユーラシア大陸最西端の地に立つことがかなう。

本夕、読了。

練習艦といえど、自衛艦は軍艦。
ゆえに、外国の港に接岸時においても大使館と同じ治外法権。
自衛官にパスポートは求められない。

Nipponmaru
今日の室蘭港。
中央埠頭に接岸した日本丸。
本船訓練後に受験できるのは、3級海技士・機関士。

〝かしま〟での遠洋練習航海後に受験できるのは、2級海技士・機関士。(注)
まだ1年半しか経っていないが、すでに海上自衛隊に就職した身。
2級海技士・機関士試験に落ちるわけにいかない。
訓練は厳しい。

著者の遠洋練習航海において、インド洋を夜間航海中に実習幹部の1名が行方不明になっている。

(注)
漁船・商船に関わる海技士・機関士と自衛艦に関わる海技士・機関士試験は、厳密に一致しているわけではない。

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コメント

おはようございます。
昨日の海の日に合わせて、室蘭港には海自の訓練支援艦「くろべ」と、海技教育機構の練習船「日本丸」が入港したそうですね。
私はあまりこういった艦に興味は無かったんですが、
室蘭港しかも自分の目に付く場所に着岸されていると、野次馬気分でちょっと気になるようになりました。
どちらもカッコいいですね。

投稿: めりー | 2023年7月18日 (火) 03:18

めりーさん、こんにちは

下の画像は、訓練支援艦「くろべ」が接岸している埠頭からのものです。
写真を撮っている私のすぐ左に満艦飾のくろべ。
オレンジ色のCHUKARⅢ(航空標的機)が1機、展示されていました。

遠洋練習航海は、毎年行われるのですが、そのたびに寄港国・寄港地を変えて行われるようです。
幹部自衛官としての練習航海中ですから、幹部練習生の1日はほんの数時間の睡眠で鍛えられます。

投稿: KON-chan | 2023年7月18日 (火) 08:00

少し補足
日本丸等に乗船するのは
商船系大学
商船高専
海技教育機構各学校

練習航海修了後受験するのは
3級または4級 海技士(航海または機関)
の  口述試験 です。

筆記試験は1級、2級であっても高校生であろうと誰でも受験可能です。

2級海技士は乗船実歴として 商船 に3級海技士を取得した状態かつ職員(士官と言われるやつ)で1年の乗船実歴が必要です。

2級海技士を免許にできるのは船員のうち上位2割ほどだそうです。

つまらん商船乗りのプライドですが
結構難しいのです。

また
海技士免許は海技士、機関士で分かれるのではなく 海技士航海 海技士機関 となります。


投稿: メンブレン | 2024年1月29日 (月) 15:41

でも
かっこいいなぁ〜
船の記事となるとついつい心が燃えてしまいます。
ご安航を祈ります。

投稿: メンブレン | 2024年1月29日 (月) 15:43

メンブレンさん、初めまして、こんにちは

〝少し補足〟ということですが、それはご謙遜。
大いに補足、かつ 思い込みで書いた私の記事の内容の誤りを指摘していただきありがとうございます。
記事のほうは、この時点での私の知識の証としてこのままにしておきます。

室蘭市内には、海事関係書をそろえていた雰囲気のいい書店がありましたが随分前に閉めてしまいました。

ところで、小型船舶操縦士1級は小樽市で受けました。
指導員からは、指示を復唱するときに、サー(sir)を付けろと言われました。
首にネッカチーフを巻いた、いかにもオフィサー然とした指導員でした。

そう、かっこいいンです。
拙ブログの古い(2008年5月3日)記事、
『繰り返す、これは訓練ではない』
https://kon-chan.cocolog-nifty.com/konchans_logbook/2008/05/post_58bc.html
には、巡視船に乗る女性海上保安官を書いています。
ご笑覧いただけたら幸いです。

投稿: KON-chan | 2024年1月29日 (月) 19:42

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