『真贋ものがたり』を読む
中国の上海市には、〝本物のニセモノ〟であることをウリにする商品を並べている店が何十軒も集まっている地区がある。
また、通行人をキャッチしては、〝本物のニセモノ〟を陳列しているビルの一室に案内する商売人もごまんといる。
グッチのネクタイの〝本物のニセモノ〟
も、
ロレックスのヨットマスターの〝本物のニセモノ〟
も、
エルメスのスカーフの〝本物のニセモノ〟
も、本物のニセモノ価格で手に入る。
こんな飯屋で読み始め。
著者は、陶磁器の研究家。
近世に至るまで、磁器製造の最先進国は中国だった。
なので、中国(明)・越南(ベトナム) からインド洋を経由して中東へ、さらに喜望峰を回って欧州へと東洋情緒豊かな磁器が運ばれた。
また、17世紀中ごろ、海賊被害などを理由に中国(清)が海上交易を制限すると、長崎から中東・欧州へ伊万里焼が渡ることになる。
オランダ人が伊万里の陶工らに見本とさせたのは中国の磁器。
輸送・荷揚げの過程で破損して捨てられ、のちに海底や土中から得られた磁器の破片
難破船から引き揚げられた磁器
旧家・古い窯元から発見された磁器
なども話題に上がる。
磁器の真贋は、
真、すなわち古い
鴈、すなわち新しい
と言っていいようだ。
分析技術が進んでも、磁器の真贋の鑑定は難しい。
が、ロクロの回転が右回りか左回りかで、真贋の決着がつくものもある。
本夕、読了。
磁器は、民生用品。
また、地域性、世襲制の強い工芸品。
ではあるが、そこはそれ、〝芸術性〟がウンヌンされる。
という3行を前置きに、〝真贋〟とは、〝芸術〟とは何か・・・
拙ブログの 『名画は嘘をつく』を読む で話題にしたのは、ニセモノの絵に魅入った私の経験。
倉敷の大原美術館で見たゴッホの『アルピーユへの道』が贋作なのを知ったのは、ややしばらくたってから。
まァ、ズワイや毛ガニのカラをむしって食べるよりも、一正(いちまさ)のオホーツク(かにかまぼこ)を選択する私のことゆえ(^^;
鍛えられた耳を持っていた某有名音楽評論家と私を並べる無礼ご容赦。
彼は、こまめに国内外の演奏会に足を運んでは生の音を聴き、自宅では総譜(フルスコア)を読みながらステレオセットからの曲を聴く。
緻密かつ知的な評論をする音楽家で とおっていた。
その彼が亡くなった時、弟子たちは知る。
右スピーカーケーブルがアンプのL端子に、左スピーカーケーブルがアンプのR端子に刺さっていたのを。
ワーム・ジグ・毛バリを使う疑似餌釣り。
ニセモノでサカナを掛ける。
これは面白い(^^)
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