『借金を返すためにマグロ漁船に乗っていました』を読む
船員には、労働基準法が適用されない。
なぜなら、陸から離れた揺れる船内が労働の場で かつ生活の場。
医療などへのアクセスも不自由。
1日8時間・1週40時間の勤務時間制限もかけづらい。
更に、休暇・休憩に定期性・規則性を求めにくいことなどから。
船員を守るのは船員法。
これにより、船員一人に一つのベッド、1日3食の食事が保障されている。
また、船員には、身分証明書と健康保険証とパスポートを一緒にしたような船員手帳が与えられる。
こんな喫茶店で読み始め。
実家はアワビ養殖業者。
その養殖施設一式が台風で流される。
民宿業を始めることで、立ち直りかけるが、繁盛したのは ほんの短期間。
何だかんだで、一家は5千万の借金を背負う。
著者、高校1年生のときのこと。
中学生の時からグレて、高校には弁当を食べて昼寝をしに通っていたようなもの。
つてがあって、実家の生活の助けとするため高校を中退、
15人乗り組みのマグロ漁船で1ヶ月の操業を2航海
15人乗り組みのマグロ漁船で4ヶ月の操業を1航海
20人乗り組みのマグロ漁船で10ヶ月の操業を1航海
20人乗り組みのマグロ漁船で12ヶ月の操業を1航海
する。
船員法により、狭いながらもベッドが与えられ、思いのほかウマい食事が1日3食提供され、著者はマグロはえ縄漁に従事する。
ところで、冒頭、〝船員には、労働基準法が適用されない〟と書いた。
ひとたび操業が始まると、食事時間は15分。
連続20時間労働。
〝医療などへのアクセスも不自由〟とも書いた。
マグロを掛けるハリが、機関士の目に刺さる。
医療機関にとどけるため、船をはしらせること1週間で、ミッドウェー島にたどり着く。
本夕、読了。
一人前になるまでは、支払われる給料は一人前の8割。
が、3航海目には、一人前分が支払われる。
カネにはなる。
カネにはなるが、著者は足掛け3年乗ったマグロ漁船を降りる。
船を降りて30年とちょっと。
オカに上がって30年くらいまでは、マグロ船にまつわる夢をよく見たという。
過酷な労働に、先輩漁船員からのパワハラ。
見るのは悪夢。
冒頭に書いた。
〝船員には、労働基準法が適用されない〟
と。
コメント
昨今は世の中がすっかり五月蠅くなって(と言うかこれが正しいのかも知れませんが)労働環境は改善されたところが多いと思います。
船員さんの世界は、そんな変化があったのでしょうか。
古きよき時代、という人もいるでしょうし、
トンデモナイ時代だった、という人もいるんでしょう。
私もこんな業界にいるにもかかわらず、労基法違反が当たり前、パワハラで体罰付きという職場に在籍していました。ほんとにビックリしたし、あの状況でよく頑張ったと自分で思います。
そんな劣悪な職場が、当時の私の経済を支えてくれました。感謝しています。
因みに、私も数年間は幻聴が残りました。今でも睡眠障害気味なのは、その職場の影響です。
投稿: めりー | 2022年11月 2日 (水) 04:54
めりーさん、こんにちは
2,3日前の新聞記事に、〝しかられない〟ことを理由に退職する若手社員がいると。
リモートワークなどで、上司から業務能力を鍛えてもらえていないと感じるようです。
他社に入社した同年輩の者が、上司からしかられながらガシガシ鍛えられていることに比べて、甘い環境にいる自分にスキルが身に付かないことにアセリをおぼえるようです。
ヒトは色々ですから、甘い環境にいることでヨシとする者もいれば、厳しく鍛えられたいと思う者もいるでしょう。
しかし、自分一人の力でスキルアップできるような仕事は、しょせん、その程度のモノ。
あるいは本当に力のあるヒトだけがなせるワザ。
我々、凡人は、ンな環境はさっさと捨てて、揉んでくれる環境に入っていくべきです。
というのが、私の気分。
まァ、ンなこと言ってる私自身がグダラグダラ。
説得力ありませんね(^^;
投稿: KON-chan | 2022年11月 2日 (水) 18:04