『なぜかいい町 一泊旅行』を読む
著者は、ドイツ文学者。
教授職にいた大学を56歳で早期退官、以降、フリーランスの文筆家。
著者は、長く日本全国を東に西に、北に南にと旅行してきたヒト。
本書におさめられているのは、16編、15の町と1つの村を訪れた紀行文。
本書中のイラストも著者による。
上手い絵ではない。
しかし、これがいい。
橋の欄干を支えにして、川の上流に向かって立ち、スケッチブックに筆を走らせているヒトを、私も、あの町、この町で見たことがある。
シライデザインの帆布のリュックに、折りたたみ傘と文庫本を入れて、私も随分とあちらこちらの町を歩いた。
小さなリュックだが、A5版のスケッチブックなら入るだろう。
それを背負い、私も、汽車に乗り、バスに乗ろうと思う。
北海道は3町、斜里町・上川町・岩内町を歩いた話。
こんな喫茶店で読み始め。
東にドーンと独立峰の羊蹄山(1898メートル)。
その西に順に、
ニセコアンヌプリ 1308メートル
イワオヌプリ 1116メートル
ニトヌプリ 1080メートル
チセヌプリ 1134メートル
シャクナゲ岳 1074メートル
白樺山 959メートル
前目国内岳 980メートル
目国内岳 1220メートル
と、私が山頂に立ったニセコの山々が並ぶ。
その目国内岳の山頂に立ち、歩いてきた尾根を背にする。
と、そこに見えるのが、雷電山(1211メートル)。
著者は、この雷電山に登るため、夏に岩内町を訪れる。
そして、後年、今度は冬に岩内町を訪れる。
1954(昭和29)年9月に北海道に上陸したのは、洞爺丸台風。
洞爺丸事件の起きた同じ日、この台風の風にあおられて、いわゆる岩内大火が起きる。
本書には、以下の記述がある。
郷土館には岩内大火を伝える新聞の切り抜きがパネルにして
あった。<中略>小さな記事に目がとまった。火事騒ぎのさ
なか強盗殺人事件があり、二人を殺傷して犯人は逃走中。
<中略>とほうもない海難事故と町の大火にかくれて小さな
かこみ記事になった。<中略>作家水上勉が、<中略>強風
と火炎のさなかの殺人事件が、小説家の想像力を刺激したに
ちがいない。代表作『飢餓海峡』は小さなかこみ記事から生
まれた。
岩内町の8割を焼き、死者・不明者38名を出したのが岩内大火。
港に浮かんでいた漁船も、岩内駅も、北海道・北海道拓殖・北洋相互銀行の各岩内支店も、火葬場までが消失している。
洞爺丸遭難を伝える新聞を、私も読んだ。
確かに、紙面は洞爺丸の転覆事件の記事で埋め尽くされ、岩内大火はわずか300文字ほど。
小さなかこみ記事だと言える。
本夕、読了。
水上勉が、洞爺丸事件と岩内大火を背景に『飢餓海峡』を執筆したのは本著者が書いた通り。
しかし、『飢餓海峡』中の殺人事件は、水上勉の創作。
私が読んだのは1紙のみ。(室蘭市内からアクセスできるデータベース限界)
また、私のこと、記事の読み落としもあるだろう。
という前提で言うのだが、
火事騒ぎのさなか強盗殺人事件があり、二人を殺傷して犯人
は逃走中。
との、本著者が言うところの小さなかこみ記事を見つけることはできなかった。
まァ、これ以上は言うまい・・・
コメント
何がほんとうで、どこからが虚実なのか?
執筆者の意図があるのかどうか。
読む側の感性、立ち位置でも変わるかも知れません。
なので、私はなかなか感想文を書けません。
投稿: めりー | 2022年8月23日 (火) 21:54
めりーさん、こんにちは
意図したわけではないでしょう。
本著者の頭の中で、情報がこんがらかっていただけかと。
よくあることです。
感想文、書かなきゃなりませんか。
聞いて、良かった
食べて、うまかった
行って、楽しかった
と同じ、
読んで、退屈だった
で、いいのでは。
気を張って、感想文だなんて考えるのは、つまらないことです。
投稿: KON-chan | 2022年8月24日 (水) 09:34
感想文を書かなくてはならなかったのは、小学生。
中学校では、書きましたっけ。特に気負わず書けたので、書いたかどうかも覚えていません。
沢山の本を読んできたはずなんですが、子供のころに読んだもので記憶に残っているのは、ごく僅かです。自分の記憶力が残念です。
投稿: めりー | 2022年8月24日 (水) 11:43
小学生の時は、書かされたような覚えがあります。
その後は、どうだったか・・・
覚えてませんね。
読んできたもので、記憶に残っているのはごくわずか。
どころか、ついさっき読んだページさえも記憶から飛び、何ページかめくり返して読み直さなければならないことも(^^;
小学校何年生だったか。
国語の教科書に「学」という字が「學」と旧字体で誤植されていたのを記憶しています。
文部省検定済みの教科書でも、そんなことがあるんですね。
つまらないことは、いつまでも覚えています(^^;
投稿: KON-chan | 2022年8月24日 (水) 14:04