『これから「正義」の話をしよう』を読む
2010年、Eテレで放送されたのが『ハーバード白熱教室』。(注)
実際の教室での講義の様子が、ほとんど無編集で放映された。
10年以上も前に見た番組だが、覚えている。
教授が学生に投げかけた質問に、学生が反応する。
その学生の反応に、教授がさらに質問を畳みかける。
教室内が、教える・教わるといった場から、議論・討論の場へと変化していく。
ハーバードの優秀な教員と学生の間で交わされるディスカッションだが、テーマはごく身近、使われる言葉も日常語。
小学生でも、このハーバードの教室内での やり取りの全てを理解できるだろう。
しかし、無編集というのは残酷だ。
投げかけられた質問に反応できず、ニヤニヤするだけの学生も映る。
アジア系。
多分、日本人留学生。
その『ハーバード白熱教室』の教授、哲学者のマイケル・サンデルが本書の著者。
本書の初版は、2010年5月25日。
それが、同年8月18日には すでに45版。
当時、この45版目の本書を買ったはいいが、40ページほど読み進めたところで放り出し。
そして、12年が経過したことになる。
副題が、『いまを生き延びるための哲学』。
さァ、いまを生き延びるために、読み直し。
こんな喫茶店で読み始め。
米国哲学の伝統は、実利・実践・現実・実用・分析・実際。
ヨーロッパ大陸哲学のような観念的難解さはない。
著者から提示されるテーマにも難解さはない。
・平等
・労働と自由
・志願と徴兵
・所得と課税
・政治
・道徳
等々。
アリストテレス・カントなど、古い時代の哲学者の諸々の説の紹介がある。
また、現役哲学者の説の紹介がある。
それらを紹介しつつ、「正義」についての長い長い著述が続く。
そして、
善とは何か
正義とは何か
それへの、著者からの解答はない。
本夕、読了。
本書では、
4人が乗った救命ボート内での殺人と食人
経営難に至った企業への公的支援
ビル・ゲイツなど成功者への市民のねたみ
など、今まさに起きている事象についてもテーマとして掲げられる。
それへは、裁判の判決・政治決定・分析が示され、読者はいよいよもって現実の中で考える正義にうろたえることになる。
(注)
今年になって、直近の講義の様子が、やはりEテレで
『マイケル・サンデルの白熱教室 2022』
と題して放映されている。
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