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2022年3月16日 (水)

『謎解き フェルメール』を読む

ヨハネス・フェルメールは17世紀の画家、オランダのヒト。
有名な『真珠の耳飾りの少女』は、'18年の10月から翌年の2月にかけて日本で公開されている。
『真珠の耳飾りの少女』に描かれている少女は、青いヘアーバンドが印象的で、本絵画の別名は『青いターバンの少女』。

油絵具は、同じ容量のチューブであっても色によって価格が何倍も違う。
フェルメールの用いた〝青(ウルトラマリン・フェルメールブルー)〟は、顔料にラピスラズリ(貴石)を使った大変に高価なモノ。
今、ウルトラマリンは合成顔料を使ったものが安く手に入る。

ところで、昨夏、フェルメールの『窓辺で手紙を読む女』が、ドイツの美術館で行われていた修復作業を終えたとの報道があった。

Johannes-vermeer 
    修復前            修復後

本画奥のキューピットは、かなり以前からX線で確認されていたが、フェルメール自身によって塗りつぶされたものと考えられていた。
が、上塗りの絵具がフェルメールのものと違うことが科学的に証明される。
そのため、上塗りされた絵具を取り除き、フェルメールオリジナル作品によみがえらせたという報道だった。
キューピットが塗りつぶされた修復前の『窓辺で手紙を読む女』のほうがズッといい。
と、私は思うのだが・・・

なお、修復された本画は、この1月から来月4月にかけて、『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』と銘打たれ東京都立美術館で公開されている。

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こんな喫茶店で、読み始め。

現在に残るフェルメールの作品は32点。
著者は、それを制作年順に、画家の生涯とともに解説していく。
ほかに、美術研究者がフェルメール作と主張する4点も紹介されるが、著者はその4点全てがフェルメールの手によるものではないと断言する。

透視図法(遠近法)が狂っているものは、画像処理で正しい透視図法表示して見せる。
で、透視図法の狂いが、画家があえて行った画法であることが示される。

フェルメールは光の描写にすぐれた画家。
42年の生涯で、画家活動は後半の20年。
その晩年近くは、光の描写が粗雑になっていく。

本夕、読了。

昨年、平山郁夫、東山魁夷らの贋作版画が本物として流通していた事件が明るみになった。
そんなレベルをはるかに越えるのが、オランダ人画家のハン・ファン・メーヘレン。
先の大戦で、ドイツの降伏は1945年5月9日。
その3週間後、戦勝国のオランダ当局は、大戦中にナチにフェルメールの絵を売ったかどで彼を逮捕・起訴する。
罪状は、国家反逆罪。
何週間かの黙秘後、それは自分が描いたと告白。
誰もそれを信じないので、彼は法廷で絵筆を持って実証することになる。

フェルメール作と信じられナチの手に渡った絵が、20世紀に描かれたものだと科学的に証明されたのは、その20年もあとのことである。

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