『樹木たちの知られざる生活』を読む
副題は、『森林管理官が聴いた森の声』。
著者はドイツ人。
日本には〝森林管理官〟という肩書の名刺を持つ者はいない。
日本で著者に相当する職名は、林野庁の〝森林官〟。
吸い込み式ポンプだと、吸い上げられる高さ(深さ)は10メートルまで。
押し込み式ポンプだと、押し上げられる高さに原理的な制約はない。
毎分1立方メートル(1440トン/日)の水を100メートルまで上げるポンプなら、モーターも含めて1トン。
水量を毎分0.1リットル(144キログラム/日)にまでに抑えれば、手のひらに載るようなポンプでも余裕で100メートルまで上げられる。
ただし、流路は1MPaの水圧に耐えられる強度が必要。
こんな喫茶店で、読み始め。
高い山に生えるハイマツは、せいぜい胸までの樹高。
チングルマだと、スネまでもない。
一方で、室蘭岳の水元沢のトドマツでも20メートルはある。
地面からこの高さにまで水を行き渡らせる樹木のポンプ作用を、毛細管現象・蒸散・根圧・浸透圧を組み合わせるだけでは うまく説明できないらしい。
文章は情緒的。
しかし、その情緒性は、信頼できる出典に裏付けされている。
著者は言う。
群生する木々らは、根を通して養分を都合し合う。
昆虫に葉や幹を食われたときには忌避物質を出し、近隣の木々らに知らせる。
寿命の長い樹木らしいゆっくりとした流れの会話が、森林にある。
と。
本夕、読了。
羊蹄山喜茂別ルートには、地面に触るか触らないかで斜面に沿って幹が伸びてから空に向かって成長するダケカンバが並ぶ地帯がある。
雪のせいで、斜面方向に押し付けられての何十年か何百年かが過ぎて、突然 空を目指した木々らだ。
登山者は、その〝L〟字型をした幹の〝―〟部を乗り越え乗り越えして森林限界を抜ける。
〝―〟から〝|〟へ。
樹木には確かに意思がある。
コメント
樹木に限らず草も小さな花も生命であるのだから、意思があってもおかしくないと思います。
人だけが意思と感情を持つとは思えませんし、それは傲慢にも聞こえます。
植物の声を聞くことができたら面白そうだと思いませんか。
私みたいにひとりごとを言ってる木や、寡黙な草、謳っている花。本当は山の中は賑やかなんだろうなあと思うと、楽しくなります。
投稿: めりー | 2022年3月 4日 (金) 13:47
めりーさん、こんにちは
ムクドリの大群やイワシの大群が、全体が一つの組織として行動するのはよく知られているところ。
個々が感覚を持つのに、全体でひとつの感覚があるかのよう。
これを〝社会有機体説〟で論じる人がいますが、言葉で遊んでいるだけ。
植物は動きがゆっくりですから、人の目ではなかなか感じられないのですが、森林単位で意思を持っているように思います。
って、これも言葉で遊んでいるだけですね(^^;
正直言って、本著者の考察はモノ足りません。
観察が情緒に走り定量性に乏しく、実験による解析がひとつもありません。
投稿: KON-chan | 2022年3月 4日 (金) 21:39