『歴史をかえた誤訳』を読む
夏目漱石の死去は、1916(大正5)年12月9日。
享年49。
だから、今日は漱石の106回忌にあたる。
英語教師として松山中学赴任時の漱石。
I love you.
を
我は君を愛す
と訳した学生に、
日本人はそんなことを言わない
月がきれいですね
と訳せ。
そう、教えたとか。
作り話だろう。
著者は、鳥飼玖美子。
著者は、序章で、
言語は文化であり、文化は言語である
文化に対する認識が欠けたまま言葉のみ訳そうとすると、
誤訳が起きる。
正確に訳そうとするならば、言語レベルを越えた文化の
理解が不可欠である。
と言う。
こんな喫茶店で、読み始め。
1945(昭和20)年7月26日の帝国へのポツダム宣言は、
我々は日本政府が全日本軍の即時無条件降伏を宣言し、
またその行動について日本政府が十分に保障すること
を求める。
これ以外の選択肢は迅速かつ完全なる壊滅があるのみ
である。
これに対して、時の首相の鈴木貫太郎は〝黙殺する〟と発言。
その真意は〝静観したい〟。
だが、国内向けに弱気だととらえられないように〝黙殺する〟という言葉を選んだと伝えられる。
東京から連合国への打電は、〝ignore〟。
〝ignore〟は、〝無視する〟の意だが、連合国側は、〝ignore〟を、〝reject(拒否する)〟の意に解釈。
それゆえ、連合国は、宣言の最後のセンテンスの「迅速かつ完全なる壊滅」を実行。
それが、8月6日の原爆投下だったという説があるようだ。
〝ignore〟という英訳に深く関わった当事者は、のちに、
〝黙殺する〟を〝no comment〟と訳しておけば
と、述懐している。
本夕、読了。
粉末大豆とニガリ(凝固剤)が、レトルトカレーサイズの箱にパッケージされたハウス食品の「ほんとうふ」。
豆腐にするには、水を加えて煮立て、型に入れて固める。
長期保存ができて軽いので、山メシにするヒトもいる。
今は通販でしか手に入らない商品だが、かつては三遊亭圓生をイメージキャラクターとするTVコマーシャルが流されていた。
圓生の決め台詞は「バカうま」。
「バカうま」の〝バカ〟。
この〝バカ〟には、〝たいへんに〟とか〝えらく〟とか、北海道弁の〝なまら〟とか、現代的に〝チョー〟とか、英語で〝very〟の意味がある。
この意味で使う〝バカ〟は、〝アホ〟とか〝マヌケ〟には置き換えられない。
中国・韓国などでは、
「バカうま」
「バカに暑いな」
という言い方はしないほうが無難。
かの地では、日本人の口から発せられる〝バカ〟は、ほぼすべて、〝アホ〟、〝マヌケ〟の意味にとらえられ、思いがけない事態を招くことがある。
日本のある製造業者が中国に設立した工場。
ここの日本人管理者が、原因不明の設備不調に対し、中国人従業員を前にして、
「そんなバカな(ことがあるのだろうか)」
と、つぶやいたところ、侮辱されたと勘違いした中国人従業員らに、大規模なストライキをかけられた事例がある。
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