『車掌出てこい!』を読む
先月31日、京王電鉄京王線(新宿-京王八王子)の特急電車内で、刃物で一人が刺され、その後、車内に放火されるという事件があった。
列車は、国領(こくりょう)駅に停車したが、正規停車位置とズレがあったため、電車とホームの間への乗客の転落を危惧、車掌はドアを開けなかった。
この車掌の判断は、車内事情を把握できていなかったゆえ妥当。
車掌が車内事情を認識できた時点では、窓から脱出している乗客がいて、すでに車両の移動は無理だった。
北海道の駅にはホームドアが設置されていないから、多少の停車位置ズレがあっても直ちに車両ドアを開けることに車掌はためらいを持たないだろう。
が、首都圏駅にはホームドアの設置が進んでいる。
国領駅のホームドアは、胸までの高さの壁。
国領駅のひとつ下り側は布田(ふだ)駅。
ここのホームドアはホーム天井まで壁が立っているタイプ。
このタイプのホームドアだと、車両のドアが開いたとしても、乗客は逃げられない。
安全システムは、設計時に想定した範囲外の事態には、むしろ危険側に機能することがある。
安全を考えるということは、大変に難しいことだ。
以下3行、蛇足。
京王線の軌間は1372ミリ(4フィート6インチ)。
JR在来線の軌間(1067ミリ:3フィート6インチ)より1フィート広い。
都電、函館市電も1372ミリ。
こんな喫茶店で、読み始め。
著者は、保線業務を5年、車掌業務を11年半勤めた元JR東日本社員。
副題は、『英語車掌が打ち明ける本当にあった鉄道クレーム』。
高崎線乗務時、自動音声ではなく、日本語と英語でのアナウンスを肉声でしていたという。
・すし詰め列車で、
「客が立っているのに、なぜ車掌が座っているんだ」
・遅れが出た列車で、
「商談に遅れる。 どう責任を取るんだ」
といった、車掌への直接クレームの対応だけでなく、
・特急料金を払わずに乗り逃げしようとする乗客
・自分の指定席でない座席で眠り込んでしまった乗客
・乗り過ごしてしまった乗客
への対応など、著者の実体験が語られる。
車掌は、1列車に1人が基本。
著者は、15両編成の列車に、通勤・通学ラッシュ時には5000人の乗客が乗っている高崎線(上野東京ライン)の車掌。
乗務は、通算10000本。
200回以上の緊急停車を経験したという。
本夕、読了。
随分前のこと。
東京メトロ赤坂駅から1区間分の切符だけを持って、乗り換え3回、4時間以上もかけて しなの鉄道の信濃追分駅まで。
降車の1時間くらい前になって、車掌室をノック。
その時、車内清算をしてくれたのは若い女性車掌だった。
清算には20分か30分か、かなりの時間がかかった。
こんな乗客への対応も車掌の仕事。
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