『奴隷のしつけ方』を読む
製造業では、
3S(整理・整頓・清掃)
4S(整理・整頓・清掃・清潔)
の励行が言われる。
安全や品質の維持を狙う基本的な行動原理、手段が3S、4S。
手段なのに、目的となりがちなのが、この3S、4S。
さらに、安全行動、品質維持行動を習慣化するために5番目の S 躾(しつけ)が加えられ、
5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)
ともなると、いよいよ手段が目的化され、3S、4Sを習慣化することだけに 躾 が使われることになりがち。
ところで、
5Sの整理・整頓・清掃・清潔・躾
に異を唱える者は労使ともいないだろう。
5Sは、
規則正しい生活・適度な運動・暴飲暴食の慎み・偏りのない食事・十分な休養
などと同様、当然の振る舞い・・・
さて、〝しつけ〟の S が加わった 5S は、しつける側の〝使〟だけを楽にしたわけではない。
しつけられる側の〝労〟も、楽になった・・・
こんな喫茶店で、読み始め。
著者は、ローマ帝国(2世紀頃)の貴族、マルクス・シドニウス・ファルクス。
現代の英国の古典学の研究者ジェリー・トナーが、それに解説を付けている。
という体裁をとっているが、マルクス・シドニウス・ファルクスという架空の人物の名を借りて、全文、ジェリー・トナーが執筆。
彼は、ローマ帝国の研究者としての豊富な知識を用いて、帝政ローマの人々の生活、奴隷の扱いを語る。
ローマ帝国の
総人口は7000万
首都ローマに限れば、人口は100万で、内、三分の一が奴隷
これだけの数の奴隷がいれば、仕事の配分、進捗の管理が必要。
食わせること寝かせることも必要。
もちろん、当時のこと。
拷問とか死という言葉も出てくる。
が、奴隷とはいっても、ムチで打たれて丸太ン棒を担いだり、食うものも食わずに夜明けから日没まで土木仕事をさせられたりとは、ローマ帝国でもなかった。
ローマ帝国の言葉を知らない奴隷の集団には、通訳奴隷も必要。
管理業務を行う奴隷もいたし、事務職の奴隷がいたことも分かっている。
書かれているのは、2000年近くも前の世界。
現代社会の、
上司と部下
士官と兵
主将とチームメイト
リーダーとパーティ
教師と生徒
キミとボク
とは、大いに違う関係がある。
また、全然違わない関係もある。
本夕、読了。
上で、
〝しつけ〟の S が加わった 5S は、しつける側の〝使〟だけを楽に
したわけではない。
しつけられる側の〝労〟も、楽になった・・・
と書いた。
現代の労使交渉の場。
交渉と称してはいるが、分析・予測、つまりデータ・論理は、決まって〝使〟から〝労〟へ示される。
要求を通すために〝労〟から〝使〟へ行使する手段をサボタージュ、ストライキに頼るのは、全くの時代遅れになった。
データ・論理に対抗するのに、サボタージュやストライキではあまりにも下品過ぎる。
〝しつける〟主人が楽で、〝しつけられる〟僕(しもべ)がつらい。
とは、必ずしも言えない。
現代。
わざわざ公務員試験を受験、公僕を目指す者も多い。
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