『残酷美術史』を読む
欧州全体の頭上を覆うのはキリスト教。
欧州全体の足元を流れるのもキリスト教。
クリスチャンが信じるのは、アダムとイヴの犯した原罪をイエスが死であがなったということ。
また、この世の終わりの日、死者の肉体と魂が復活、イエスの裁きを受けるということ。
言葉足らず、表現の稚拙を承知で一行で言うと、
〝欧州人にとってイエスの死は救いであり、自身の死は恐怖〟
こんな喫茶店で、読み始め。
欧州の古典美術は、
ギリシャ神話・ローマ神話
旧約・新約聖書
にテーマをとったものが多い。
ギリシャ神話・ローマ神話の神々は戦うし、イエスの死は上で書いた通り。
キリスト教会・修道院が画家に描かせたイエスの死が多く残っている。
章は六つ。
残酷なる神話の世界
聖書の裏面
血塗られたキリスト教世界
魔女裁判を中心に
殺人と戦争
病・貧困
十字架にかけるために手足にクギを打たれているイエスの描写も残酷だが、本著者はミレーの「落穂拾い」の貧困も、『残酷美術史』の一枚として取り上げる。
本夕、読了。
画家の想像力だけでは描き切れず、腐敗を始めてガスで膨らんだ腹、変色した皮膚の遺体を観察、それをキャンバスに反映させた絵もある。
中学校の女性美術教師の言葉を今でも覚えている。
彼女が言ったのは、
「自分の描いた絵を見られることは、自分の裸を見られるより恥ずかしい」
副題は、
『西洋世界の裏面をよみとく』
見るヒトが見れば、絵に画家の心の底もよみとけるようだ。
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