『機密費外交』を読む
〝使途不明金〟なら、横領を疑わなければならない。
〝使途秘匿金〟なら、後ろめたさはない。
納得のうえで使途を隠す。
ただし、課税される。
官房機密費。
内閣官房長官の一存で使える経費で、会計検査院の監査さえ受けない。
国会運営を前に進めるために、野党幹部を懐柔するのに使われた(こともあったらしい)。
意外と少ないもので、予算規模は12億円くらい。
こんなイートインカウンターで読み始め。
帝国敗戦の前日の閣議で決定したのは、機密文書の焼却。
その日から焼却が始まったが、満州事変から日中戦争開戦頃の外交機密費文書は残った。(注)
著者の専攻は、日本政治外交史。
日中間の紛争の拡大を望む者はいない。
が、拡大する一方。
その日中関係の修復を目的とする工作のために、外交官はしばしば東京の本省に機密費を要求する。
また、彼らは機密費の使途を領収書を付けて本省に丁寧に説明している。
使途は、スパイ活動(本書では、インテリジェンスと称している)と接待。
本夕、読了。
土建築・解体工事には、その費用の一部に地域対策費とか現場環境改善費と呼ばれる損金扱いの経費が認められている。
工事開始前に、工事現場近くの住民に手拭いなどを配ったりするのに使われる。
かつては、地域の顔役、仕切り役、早い話が工事現場あたりを縄張りとする組織への挨拶料にも使われた(こともあるらしい)。
機密費に似ている。
そのものずばり、役員機密費(役員報酬)が与えられる企業は多い。
労務担当役員なら、労働組合幹部との会食などに使う(こともあるらしい)。
露口茂が演じる『太陽にほえろ』の刑事は、警視庁七曲署の〝ヤマさん〟。
彼は公園のベンチで情報屋から難事件の重要情報を得る。
で、情報屋への報酬として、タバコの箱に隠した1万円札を渡す。
機密費なのかポケットマネーなのか。
(注)
満州事変
1931(昭和6)年、帝国陸軍(関東軍)が故意に南満州鉄道の線路を爆破 (柳条湖事件)。
それを口実に、関東軍が軍事行動を起こし満州占領。
中国との武力紛争は'33(昭和8)年まで続く。
日中戦争
1937(昭和12)年ー'45(昭和20)年
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