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2021年7月 9日 (金)

『精神鑑定とは何か』を読む

窃盗・強盗。
そこに至った経緯を理解できなくもない。
昭和残侠伝。
「親分さんには何のうらみもござンせんが、渡世の義理ゆえ、死んでもらいます」
これも、理解できなくはない。

これらと違い、犯行に至った理由が理解しにくい犯罪。
そのとき、検察側は、立件しうる犯行であることを証明するために精神鑑定を求める。
一方、弁護する側は刑事罰を問えないことを証明するために精神鑑定を求める。
なぜなら、刑法第39条には、短く2行、
 1心神喪失者の行為は、罰しない
 2心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する
とあるから。

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こんな喫茶店で、読み始め。

著者は精神医学者。

 1心神喪失者の行為は、罰しない
 2心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する
ことを知っていれば、罪から逃れるため、精神疾患者であることを装ったり、多重人格者を装ったりするのはありうること。

著者は、被告の生い立ちや生活環境に至るまで、時にはMRIなどで脳自体までを調べ上げて鑑定書を作る。
その内容が、進行中の裁判に証拠としてすでに提出された範囲を超えることもあるという。

であっても、証拠として裁判所に提出される検察側鑑定人の所見と、弁護側鑑定人の所見が相反することがある。

本夕、読了。

'17年の日立市で起こった事件は、妻と子供5人を自宅で殺害、さらにそこに放火したというもの。
その罪に問われた被告へ、水戸地裁が先月30日に下した判決は死刑。

被告は起訴された後、持病で一時的に心肺が停止。
その後遺症で事件時の記憶を喪失したため、弁護側は訴訟能力そのものがないと主張。
また、事件当時は心神喪失あるいは心神耗弱状態だったので責任能力もないと主張。
検察側鑑定人の所見と、弁護側鑑定人の所見が相反していた裁判だった。

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