『解剖学はおもしろい』を読む
江戸の中期、1774年。
前野良沢・杉田玄白らによって出版された『解体新書』の底本は、オランダ語で書かれた『ターヘル・アナトミア』。(注1)
それから2世紀半、昨年10月。
オランダの医学研究所が発表したのは、頭蓋骨中の鼻腔と咽頭がつながるあたりで、肉眼で確認できる大きさの1対の未知の器官(唾液腺らしい)を発見したというもの。
光学顕微鏡下、さらには電子顕微鏡下で調べ尽くされたかのごとき人体の構造。
なのに、こんな発見が21世紀にある。
こんな飯屋で、読み始め。
医学としての解剖学は、生者のための学問。
著者は臨床経験がないまま法医学を学び、監察医になったヒト。(注2)
解剖は5000体を超すが、医療の下にない死体にばかりに関わってきたヒト。
そのヒトが、専門外の解剖学を看護学生に講義することなる。
1骨格
2筋肉
から始まって、
10神経
11感覚器
まで。
各セクションごとの〝脱線講義〟に、死体の変化を見続けたこのヒトの知見が語られる。
法医学者としての著者は、泳げる者が背の立つ深さで溺死することへの関心がある。
1914年のノーベル生理医学賞受賞者は、ロベルト・バラニー。
賞は、「内耳系の生理学および病理学に関する研究」に対して。
外耳道に体温より冷たい水を入れると内耳液に対流が生じることで、眼震(めまい:平衡失調)が起きるというもの。
バラニーの受賞から70年後、彼の学説は否定される。
米国のスペース・ラボ内で、4人の宇宙飛行士に行った外耳道に水を入れる実験。
対流が起こり得ない無重量環境なのに、めまいが起きた。
この宇宙での実験結果を得る20年近くも前。
著者は泳げるのに溺死した者の内耳の解剖所見から、平衡失調が内耳液の対流とは全然違うことに原因があることを発表している。
本夕、読了。
味覚は、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の基本5味。
最近、さらに脂肪味が加わったという報道があった。
私は、〝焦げ味〟とか〝燻製味〟というべき味も加えるべきじゃないかと思う。
思うに、調理の始まりは〝焼く〟だったのではないか。
で、ヒトの舌は焼き味、すなわち〝焦げ味〟・〝燻製味〟を好むようにプログラムされているのでは、と。
以上、我が愚考(^^;
(注1)
『ターヘル・アナトミア』の原本は、ドイツ人がドイツ語で書いたもの。
日本へは、そのオランダ語訳本が入ってきている。
(注2)
行政解剖を行う医師のこと。
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