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2021年4月 7日 (水)

『日本語と西欧語』を読む

川端康成の『雪国』などを英語に翻訳し世界に紹介したことが、川端のノーベル賞受賞に大きく貢献したと評されるのはサイデンステッカー。(注1)
『雪国』の有名な冒頭のフレーズは、
 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
彼は、それを、
 The train came out of the long tunnel into the snow country.
と翻訳している。

原文に主語はないが、列車に乗って窓の外を見ている主人公なのは明らか。
トンネルの暗闇を抜けると、主人公の目に映ったのは雪の積もった景色となったことが分かる。

英文のほうは、主語に〝列車〟をもってきて、〝列車〟が長いトンネルを抜けて雪国に出てきたと表現している。

本著者(注2) は、多くの例から、
 西欧語を俯瞰・鳥瞰する視点の語、〝神の視点〟の語
 日本語を地面から見上げる視点の語、〝虫の視点〟の語
であるという。
〝神の視点〟は瞬間の景色を上から見る。
〝虫の視点〟は地上にいて見る。
そして、時間の経過も見るとも。

Photo_20210406141101
こんな喫茶店で読み始め。

副題は、『主語の由来を探る』。

古い時代の英語では、主語の省略は珍しくなかったようだ。
それが大きく変化したのは、イングランドがフランスに征服されたNorman Conquest(ノルマンの征服:1066年)。
その後、ラテン語・フランス語で支配された300年間で英語が変わったようだ。

「3時だ」、「寒いね」を、
 It is 3 o'clock.
 It is cold.
と、ダミーの主語を置かねばならないのが現代英文法。
その英文法を下敷きにして日本文法を語る日本の国文学会を、本著者は批判する。

本夕、読了。

 風
という文のに、ひらがなを1文字ずつ入れよというクイズを、日本人と日本語を学ぶ英・仏語ネイティブに出す。
日本人は、
 
英・仏ネイティブは、
 
とすることが多いと本著者。

以下は、私の愚考。

日本人釣り師は
 サカナ
と言う。
多分、英・仏語ネイティブ釣り師は、
 サカナ
と言うのではないか。

(注1)

川端康成は、ノーベル賞受賞の半分は自身の文学を世界に紹介したサイデンステッカーによるものだと言っている。
実際、賞金の半分をサイデンステッカーに渡している。

(注2)
カナダは10の州と3つの準州で構成され、国としての公用語は英語と仏語。
ところが、モントリオールのあるケベック州だけが、仏語のみを公用語として認め、英語を公用語から排している。
本著者は、そのケベック州の大学で日本語を教授する日本人言語学者。
日本の大学を出てから、ケベック州の大学で言語学で修士号・博士号を得ている。
カナダ在住、40年を超す。

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コメント

google 翻訳だと
After passing through the long border tunnel, it was a snowy country.
になりました。
私はこっちの方が良い感じがしますね。

サカナが釣れた
I caught the Fish.
って言うかもね。

google で検証したら
I caught a fish.
でした。
未だに、the と a の使い方が。。。

投稿: ja8oxy | 2021年4月 8日 (木) 12:28

ja8oxyさん、こんにちは

そうかァ、今はgoogle翻訳があるんですね。

英語の冠詞は難しいですね。
英語圏では乳幼児が言葉を発するたびに、親が冠詞を追加したり訂正したりするようですね。
私はもう語学は諦めました(^^;

投稿: KON-chan | 2021年4月 8日 (木) 19:19

DeepL翻訳では、
After passing through the long border tunnel, we found ourselves in snow country.
になりました。googleとほぼ同じですね。
私、最近はDeepLを使っています。

The distant mountains, where the rusty color of the autumn leaves was getting darker by the day, came alive with the first snowfall.
本夕の雪は、なごり雪にはまだ早いとは思いますが。

私は日本語もままなりませんので、翻訳ソフト有り難いです。
(入力がオカシイとどうにもなりませんが)
「風が窓を開けた」のほうが好き。
日本語の流れが好きです。
それを、語学がまともにできない理由にしてはいけませんが。

投稿: めりー | 2021年4月 8日 (木) 21:13

めりーさん、こんにちは

DeepL翻訳は優秀だと好評のようですね。

google翻訳は、
After passing through the long border tunnel, it was a snowy country.
DeepL翻訳は、
After passing through the long border tunnel, we found ourselves in snow country.

前句は同一、後節は
googleが it
DeepL が we
を主語に立てていますね。

この行だけならこれでいいのでしょうが、『雪国』全文を翻訳させ、さらに推敲(機械翻訳にそういう機能があるならば)させたなら、後節の主語は変わるように思います。

『雪国』の登場人物は第三人称で書かれています。
〝国境の長いトンネルを抜けると雪国であった〟と感じたのは、主人公の島村。
どうしても主語を立てなければならない英語への翻訳ですが、it にも we にもちょっと気持ちの悪さがあります。

サイデンステッカーの翻訳は、
The train came out of the long tunnel into the snow country.
景色が瞬間で時間の経過がありません。
時間の経過を表現するにはgoogleやDeepLのように afterなどを使った副詞句が必要になりますね。
サイデンステッカーはセンテンスを短くすることを考えたのだと思います。

「風が窓を開けた」のほうがお好きですか。
めりーさん、
 サカナが釣れた
とは言わず、
 サカナを釣った
と言うヒトですね(^^)

投稿: KON-chan | 2021年4月 8日 (木) 23:05

30代のころ、朝の教育TVで美人の(私の好みだったのか?)
女性がアメリカを旅するロケでの英語の教育が有り
必死で気に入った文章を暗記しました。
100文章を暗記して、言えるようになったら
海外へいっても、そこそこ話せるようになった。
言いたいことは言えるようになったが、
問題は相手が何て返事してくれたかがよくわからない事です。
雰囲気で、感じ取る事しかできないのが寂しい。
なにしろ、基本文系にはまるで弱い私。
 それでも、最近は暇に任せて、自作した曲の譜面を見て
キーボードを弾けるようにと、毎日1回は練習してますが、
なかなか、上達できない。譜面を見て鍵盤の位置を数えなくても、
それなりに判るようにはなってきたけど、
かなり無理があります。
自分で作った曲を弾けないなんて、情けないですよね。

投稿: ja8oxy | 2021年4月 9日 (金) 00:20

ja8oxyさんは楽器もやるし、作曲もやるし。
音楽をやるヒトは外国語に強いですね。
聞く話すは耳ですからねェ。

本書には、コヨーテ(coyote)の発音について触れています。
スペルが coyote だから コヨテ と発音しそうなものですが カヨリ 。
party は パリィ。
英語は文字と発音に差があり、 聞く のが難しい言語のようです。

私は完全に学校英語。
読めますが、書く・聞く・話すはダメ。

日本人の英語を聞く・話すの実力はアジアで最低のようです。
私も負の方向にそれに貢献しています(^^;

投稿: KON-chan | 2021年4月 9日 (金) 08:16

どうも、出来た曲を弾く、演奏するのと
作るのは別物なのかも、両方できる人は
天才に近いのかもしれませんね。
私の頭の中では、譜面を見ながら
頭の中では、他のことを考えているようです。
素直に弾かないで、譜面を見て、ここは半音上げたらいいかなとか、考えているようで、いつまで
たっても、賽の河原なんです。
笑っちゃいますよね。

投稿: ja8oxy | 2021年4月 9日 (金) 16:23

英語も何回も聞かないと理解できませんよね。
ウルトラマンなんて、全然違います。
以前、習っていたときに、聞きましたけど
私が聞いたら、アウトマンみたいでした。
完全に私の耳が out man です。

投稿: ja8oxy | 2021年4月 9日 (金) 16:26

モーツァルトやシューベルトがそうですね。
作曲家としての天才と同時に演奏家としても天才だったようです。
初見で歌う仕組みは本を音読するのに似ていますが、演奏となると訓練以上に才能が求められますね。

ultra の u は up の u と同じで ア と発音するようです。
だけど、私の耳だと オ と聞こえます。

「いらっしゃいませ」は中国語で「歓迎光臨(欢迎光临)」。
「ファンイン グァンリン」と発音しているようですが、これが何回聞いても聞こえません。
中国で仕事をすること十何日目くらいに、店員が「歓迎光臨」と言っているのが認識できた時はうれしかったですねェ。

日本語だって聞きづらい滑舌のヒトいますもんね。
音の聞き取りは難しいです。

投稿: KON-chan | 2021年4月 9日 (金) 18:10

そーか、昔から本の音読は出来なかった。
突っかかってばっかりで。。。
凄く上手な同級生の女子がいたなぁ。
歌も歌えないしなぁ。
最近は、さらに耳が悪い。高音がまるで聞こえない。
体温計の音は、たまに聞こえるときもある程度。
スマートウオッチは、振動で測定終わったと教えてくれるので助かります。

投稿: ja8oxy | 2021年4月10日 (土) 03:00

私はまだ実感しないでいますが、加齢とともに高音域が聞きづらくなるようですね。
聴覚を失っても運転免許は受け取れるようですが、船舶免許はダメですね。

聴覚の単位は dB。
単位が1変わるだけで、実際の物理量は10倍も違うのですから健常時のヒトの可聴域は広い。
逆に、衰え出したときの落ち込みも大きい。
分解能も落ちるらしいですので、今のうちにいい音楽をたくさん聞きたいと思います。

もう閉めてしまいましたが、東京池袋にアムラックスというトヨタのビルがありました。
スカートの短い美形のアテンダントが案内するショータイムがあります。
振動体が仕掛けられたイスが50席くらい。
これが低音が鳴ると、いい感じで震えるんです。

音は確かに振動なんですねェ。

投稿: KON-chan | 2021年4月10日 (土) 09:22

それと、動体視力も落ちてくるのかも。
野鳥を探していると。ほぼ170度位の範囲で
検知は出来るようですが、あっ何か飛んだ!
黒い物、白い物、と言った具合。
何処へ行ったのか、方向しか判らない。
ボートだと、まだ、目は十分使えるようだ
2km先くらいは相変わらず見えるが
ボートはとろいので、動体視力が落ちても
問題無いようです。

投稿: ja8oxy | 2021年4月10日 (土) 18:21

dbが出ましたね。
20log10(x)  xは電圧比の場合でしたよね。
10倍で20db
100倍で40db
でしたよね。昔、アンプを作ったときに覚えた
数値です。電力は使わないけど10Logだったかな。
まあ別に、db使わなくても何倍でも問題無いですけど
私たちのレベルだと。そんなに桁は増えないので。
1000倍なんてまず使わないですね。それでも60dbですね。
無線のアンテナだって、私の八木でも10db止まりですね。
あれは電力ですね。じゃあ10倍-20倍程度ですね。
アンプの周波数特性は-3dbまでを示してますね
何故-3なのか。。70%くらいですけどね。

投稿: ja8oxy | 2021年4月10日 (土) 18:39

動体視力どころか静体視力も落ちます。
私は、ちょっと暗いところだとモーターの銘板が読めなくなりました。

また虹彩の動きも鈍くなっているように思います。
明るい所から暗い所に入ると虹彩が広がります。
この広がる速さは変わっていないように思いますが、その逆、暗い所から明るい所に出た時の虹彩の縮みは遅くなったと感じます。
だから、日中に車を運転する時、トンネルへの入りは不便を感じませんが、トンネルから出る時は大変にまぶしいですね。

ところで、私のdB単位の認識は間違ってますね。
それを含めて私のレベル(^^;
コメントは訂正せず、そのままにしておきます。

電圧と音では定義が違う上に、さらに音の強度と音圧とでは違うんですね。
音の、
強度だと 20dB で 100倍
音圧だと 20dB で  10倍
騒音計は音圧ですが、聴力計はどちらを使ってるんでしょう。

投稿: KON-chan | 2021年4月10日 (土) 20:55

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