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2021年2月26日 (金)

『登山外来へようこそ』を読む

〝国際山岳医〟は、国際山岳連盟・国際山岳救助協議会・国際登山医学会の3団体が認定する。
10年ほど前までは、英国やスイスの大学の認定プログラムに参加しなければ得られなかった資格。
本著者は、その資格を得た日本人第一号。
今は、日本登山医学会も〝国際山岳医〟を認定するプログラムを持っている。
日本には、現在、30人ほどの〝国際山岳医〟がいるとのこと。

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こんな飯屋で読み始め。

著者は、札幌の北海道大野記念病院に開設されている〝山岳外来〟の医師。
〝山岳医〟とは、〝山〟と〝山の医療〟を知っている医師。
一定の登山技術を有し、山で起こりうる病気やケガの専門知識を持つ。

山で起こる病気やケガは低地にいても起こる。
高所に特有なのは高山病くらいのもの。
これは標高を落とせば治る。
なのだが、著者が〝山岳医〟を目指したのは、トレッキングで出かけたネパールの4500メートル地点で重症の高山病の日本人登山者を見た(診た)ことがきっかけ。
肺水腫を発症していたかもしれないが、水を飲ませ、努力呼吸(注)を教えて下山させただけ。
その処置への自信が彼女にはなかった。

本夕、読了。

低地で対処できない病気やケガを、山で治療できるはずがない。
だから、本書に書かれている病気やケガの予防・処置は、ごくごく当たり前のこと。

山での三大死因は、
   外傷
   心臓突然死(心筋梗塞)
   寒冷障害(低体温症)

落石・転倒などで外傷・出血。
この時、
 出血部位を心臓より高く上げる
 出血部位より心臓に近い部位を圧迫する
と、聞いたか読んだかしたことがある。
しかし、本書によれば、現在勧められているのは、出血部位を直接圧迫する止血法なのだとか。

デカいアタリ。
この時、
 竿を立ててアワせる
   落ち着くため、努力呼吸で酸素を取り込む

山岳医療の本を読んで、サカナ釣りを連想するのはバカゆえ(^^;

(注)
努力呼吸とは、本書によれば、まず息を吐く。
要領は、30センチ先のロウソクの炎を3秒で吹き消すイメージ。
息を吐けば、自然に吸える。

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コメント

おはよーございます。
爪先に炎を灯して暮らしております。
ロウソクを3秒かけて吹き消す、は可能でしょうか?
ロウソクは、気化した蝋を空中の酸素を利用して燃焼させるもの。空中に15%程度の酸素濃度が必要とされるようです。
人の呼気の酸素濃度ってどのくらいあるんでしょうね。
(ああ、イメージですよね。理解しています)

山のことは無知ですが、貴兄が歩く高度の山でも高山病のリスクはありますか?
ちょっと登っても酸素濃度が足りず、
海に沈んでも酸素を取り込むことができず。
不便なものです。

余談ですが、海水酸素量の減少が判っているそうですね。
サンマやイカだけじゃなく、室蘭近海でも魚の様子が変わったと聞きます。
海も、地球規模で環境変化が起きているんだろうなあって思います。

投稿: めりー | 2021年2月27日 (土) 05:02

めりーさん、こんにちは

大雪山、羊蹄山クラスの山でも、頭が痛くなるので高度順応を目的にゆっくり上がるとというヒトを知っています。
'09年7月の『トムラウシ山遭難事故 調査報告書』を読みました。
生存者の証言に、1700mくらいで高山病症状が出たという記述があります。
体質でしょう。

夏の北アルプスや富士山では高所診療所が開設されます。
本著者は、大野記念病院の非常勤医。
なぜ非常勤かというと、夏は北アルプスや富士山の診療所に詰めているから。
そこに来るのは脱水症を併発した高山病者が多いようです。

破傷風菌のような嫌気性生物がいます。
遠い将来、酸素を必要としないで生きるすべをヒトは得るかもしれませんね。

理由は分かりませんが、確かに海の様子は変わりました。

投稿: KON-chan | 2021年2月27日 (土) 09:08

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