『神々の山嶺』を読む
〝山嶺〟と書いて〝いただき〟と読ます。
よって、本書名の読みは『かみがみのいただき』。
拙ブログの10月14日の記事は『みんな山が大好きだった』。
『みんな山が大好きだった』の本文中の登場順に従わず、私が当記事の最初に記したヒトの名は、森田勝。
そうした理由は、近々の読書予定に『神々の山嶺』があったから。
本書『神々の山嶺』の重要登場人物の羽生丈二(はぶじょうじ)のモデルが森田勝。
本書はエヴェレスト登頂をめぐる国内外の山岳史実にヒントを得た創作。
山岳史実とは、1920年代から何次にもわたって登頂が試みられた英国登山隊によって、1953年にエヴェレストが初登頂されたこと。
それをさかのぼる30年前の1924年の初期の英国隊のこと。
隊員2名が、頂上直下まで高度を上げていることがテントサイトから目視されている。
しかし、登頂の成否が分からぬまま2人は行方不明となる。
1999年、遭難者の内の一人のジョージ・マロリーの遺体が発見される。
遺体の所持品からは、1924年に登頂がなされていたかの証拠となるフィルムが入っているはずのコダックのポケットカメラが見つかっていない。
史実を年表風に整理すると、
1924年 英国隊員初登頂成否不明なまま遭難
1953年 英国隊員初登頂成功
1997年 『神々の山嶺』発刊
1999年 '24年の遭難者のジョージ・マロリーの遺体が発見される
(ただし、コダックのポケットカメラは未発見)
こんな喫茶店で、読み始め。
ストーリーの進行役として、1995年日本エヴェレスト登山隊のカメラマン深町誠が創作される。
この深町誠が、カトマンズの古道具屋で、BEST POCKET AUTOGRAPHIC KODAK SPECIALを見付けることから話が始まる。(注)
本夕、読了。
著者は夢枕獏。
エヴェレストで遭難死したジョージ・マロリーのこと。
羽生丈二のモデルの森田勝のこと。
それらをネタに上下巻で1000ページを超す大きなドラマにふくらませている。
エンターテインメント作家の手腕は優秀。
shinyaさんから頂いた本。
(注)
本書では、
BEST POCKET AUTOGRAPHIC KODAK SPECIAL
と表記されている。
しかし、遭難者のジョージ・マロリーがエヴェレストに持って行ったのは、
Vest Pocket Kodak ModelB
なお、本書『神々の山嶺』を下敷きにして、角川が『エヴェレスト 神々の山嶺』と改題して映画化している。
封切りは'16年。
私が言うのも不遜・生意気だけれども、映画は駄作。
羽生丈二を演じたのは阿部寛。
深町誠を演じたのは岡田准一。
阿部寛の演技が悪いのではない。
岡田准一の演技が悪いのではない。
悪いのは構成。
2時間の映画なのに、1000ページを超す話のたくさんのエピソードに引きずられている。
2時間の映画なら、2時間で収まる映画のための話を創作しなければならない(と思う)。
コメント
この本、大好きです。
山に行かない私にも、山を歩く人の気持ちにさせてくれる。
山を歩く気持ちは、どこか、私が丘で風になるのとか、夜にひとりで凍てつく星を仰ぐのと似ている気がするから。
(ほんとうのところは、私は山を歩かないので知らないのでしょう)
あまり「この作家が好き」というものが無いんですが、夢枕獏は好き。
(といってもこの他に1作しか読んでいませんが)
気に入った本は何度でも読み返すほうで、この本も、そのひとつです。
気に入った小説が映画化されても、あまりその映画を見たい気持ちになりません。
原作と映画は別物。
私の中にできたイメージが、映画とは違うことがほとんどなので。
逆に、映画を先に見ちゃったら、原作を読むこともほとんどしません。
こんなに長い話しを、2時間に収めるなんて無理がありすぎますよね。
しかし、海。
この風はいったいどこから吹くんでしょうか。
このまま、私の艇はシーズンオフになるんじゃないかという気がしてきました。。
投稿: めりー | 2020年10月25日 (日) 07:43
追記・
あら、シロノワールですね。
これ、もうちょっとデニッシュが頑張ったら最高に美味しくなるのにーって思います(笑)
でも、ここの食パンは超お気に入りです。
投稿: めりー | 2020年10月25日 (日) 07:46
めりーさん、こんにちは
じき、凪いで、沖に出ることができるでしょう。
沖でお会いしましょう。
室蘭市内に映画館は1館。
スクリーンは全部で4面しかありません。
なので、話題作だからといって全てを観られるわけではありませんが、この『エヴェレスト 神々の山嶺』は室蘭でも上映されました。
4年前に観に行ってます。
映画は観たけれど、原作は今回が初めて。
1000ページを読ませるのですから、原作のほうがずっといいですね。
映画は2時間。
2時間ですから、原作から離れて話を練り直さないと。
山を撮らせたら、日本ならNHK報道局山岳班。
私は秋の白雲岳に向かっていた時に、NHK隊のロケ現場横を通過したことがあります。必要十分な人数と予算を使っているのが分かります。
自然の映像ならNHKとBBCです。
〝『みんな山が大好きだった』を読む〟に記した上から3人、
森田勝(羽生丈二のモデル)
加藤保夫
長谷川恒夫
は、山を歩く者なら誰でも知っている岳人たちで、『神々の山嶺』にも史実をモデファイされて登場します。
実際の世界での この3人は、同時代人でライバル関係にありました。
コダックのポケットカメラを持ってエヴェレスト山頂に向かっていて(山頂を踏んでの下山時だったかもしれないが)遭難したジョージ・マロリーの遺体の発見が、本書発刊の後だったというところに、作者の目の付け所の良さを感じます。
シロノワール、よくお分かりで。
室蘭市内・登別市内の喫茶店は、病院や大学生協の喫茶コーナー含めて全部入店済み。
家人に付き合い、苫小牧。
そこのコメダ珈琲で、読み始めました。
〝山食パン〟という名称で売られていました。
読んでいるのが山の本。
買わねばなるまい。
5枚切り、厚さ20ミリを購入(^^)
投稿: KON-chan | 2020年10月25日 (日) 09:54