『愛国心を裏切られた天才』を読む
ブルゾンちえみは芸能界から身を引いたそうで。
そのブルゾンちえみの決めゼリフは、〝35億。 あと5000万〟。
〝35億〟とは、世界の人口の半数の男性数を表す。
〝あと5000万〟とは日本の人口の半数の男性数を表す。
世界人口の推移は、
1800年 10億人
1900年 20億人
1960年 30億人
1974年 40億人
1987年 50億人
1999年 60億人
最新の統計を見ると、世界の人口は77億を超えている。
人口の増加を支える穀物の生産は、肥料にかかっている。
肥料の3要素は、窒素・リン酸・カリ。
代表的な窒素肥料の硫酸アンモニウム(硫安:(NH4)2SO4 )は、アンモニアと硫酸から合成される。
さらにその前段階、窒素と水素からアンモニア(NH3)を工業規模で合成する方法がハーバー・ボッシュ法。
本書の副題は『ノーベル賞科学者ハーバーの栄光と悲劇』。
ハーバー・ボッシュ法の発明者のフリッツ・ハーバー(1868年ー1934年)の生涯が、本書で語られる。
こんな飯屋で読み始め。
第一次世界大戦は、1914年ー1918年。
敗戦国ドイツの人のハーバーのノーベル賞受賞は、大戦の終わった年の1918年。
ハーバーは1924年に来日するのだが、それを伝える東京朝日新聞の記事が掲載されている。
見出しは、〝毒ガスを発明したドイツの博士来る〟
1900年代初頭、アンモニア合成法の発明で祖国の農業生産量の拡大に貢献したハーバーは、第一次世界大戦においては、祖国の勝利のために毒ガス兵器の開発と実戦への投入法を指導している。
日本においては、新聞記事の見出しの通り、彼の知名度はアンモニア合成法の発明者としてより、西部戦線に用いられた毒ガスの発明者としてのほうが高かったくらい。
だから、ハーバーへノーベル賞が授与され、しかもその時期が大戦直後だったことに対し、当時、ノーベル財団へは国際的に批判の声が多く投げかけられたという。
しかし、科学に対するノーベル財団の中立性・客観性の純粋さはハーバーへのノーベル賞の授与で示されたともいえる。
ハーバーはユダヤ人。
同じくユダヤの同時代人のアインシュタインがコスモポリタンだったのに対し、ハーバーは極めて土着、内向きのヒト。
そのドイツ愛国のゆえから、ユダヤ教からプロテスタントに転向。
ハーバーは科学者として優秀だったことに加えて、管理者としても大変に優秀なヒトだったようだ。
平和時はドイツの工業力のため、戦争時はドイツの軍事力のため、その天才を発揮。
研究所の運営、テーマの遂行、課題の解決に寝食を忘れる。
でありながらも、彼は祖国を追われ、没地はスイス。
本夕、読了。
函館公園内の函館博物館近くに、フリッツ・ハーバーの叔父に当たるルードヴィッヒ・ハーバーの殉難碑があることを知るヒトは少ない。
ルードヴィッヒは維新間もない日本の駐函館領事補で、排外人思想を持つ旧秋田藩士に斬殺されている。
その没後50年祭にフリッツ・ハーバーが訪れて献花している。
〝毒ガスを発明したドイツの博士来る〟と報道された来日時のこと。
コメント
入試科目に化学が無かったため、高校化学を選択しませんでした。
大学に行ってから、いきなり横長の多角形にアルファベットがぶら下がった記号が出てきて、こんな基礎的なこと知ってて当然な授業が進められて、当然ですが教諭が何を説明しているのかサッパリ理解できませんでした。
よく、単位が取れたものだと今でも思います。
(んっ?もしかして落としてたかなあ?記憶の彼方。。)
いや、化学が全くわからんので、理解してる人はすごいやーと思うのです。
バッテリーの仕組みですら、脳が理解するのを拒否ります(笑)
私がメインで使う液肥ハイポネックスは、窒素・リン酸・カリが6・10・5
硫安は、春の芽出しに使うこともあります。
どうでもいい話しでスミマセン
投稿: めりー | 2020年9月15日 (火) 18:22
めりーさん、こんにちは
ハーバー・ボッシュ法は高校化学で習いました。
遠い日のことですが、何となく覚えています。
かなり以前から化学と物理の境があいまいになっているそうで、ハーバーの専門も電気化学。
物理化学と呼ばれる世界のヒトです。
彼のチームはアンモニア合成法に使う〝触媒〟を見つけるために、1000以上の候補を片っ端から試しています。
優秀な管理者でもあったハーバーは、そのマネージメントを効率的に進めています。
〝触媒〟とは、反応に関与はするけれど、反応の初めと終わりで変化しない物質。
当時は片っ端から試さざるを得なかった〝触媒〟ですが、今はこの〝触媒〟を設計できるのだと、〝触媒〟に詳しい工学修士から聞きました。
ところで私、ダイオキシン類関係公害防止管理者資格を持っています。
ンなこともあり、ベンゼン・トルエン・キシレン程度の化学式は知っています。
また、釣り師の端くれのつもり。
なので、PE(ポリエチレン)やナイロン(ポリアミド)の化学式も知っています。
炭化水素の燃焼熱の計算も、エッチラオッチラできます。
偉そうに並べたけれど、私の化学、これくらいで終わり(^^)
20世紀初頭のドイツは制海権を英国に握られ、窒素肥料であるチリ硝石(NaNO3)の輸入がままならなかったことが本書に書かれています。
当時の日本の農業。
窒素肥料といえば、人糞・獣糞・鶏糞・油カス・魚カス。
ですが、欧州人はウンコで育てた野菜なんか食べませんから、何としても空中窒素の固定法が必要だったわけです。
我が家でも、家人がハイポネックスを使ってますね。
鉢に植わっているのが、何という名の植物なのか、私は知りません(^^;
投稿: KON-chan | 2020年9月15日 (火) 21:01