『数学する人生』を読む
STAP細胞発見の発表をした女性研究者が研究室でドレスの上に着ていたのは、コート型白衣ではなく割烹着だった。
高校生の時。
1年生の冬休み後の3学期だけ臨時に教えに来た数学教師は、総白髪のオバアちゃん。
で、和服に割烹着。
オバアちゃん先生、奈良女子大の数学科出身だと聞いた。
岡潔(おか きよし)は、その奈良女子大で長く数学研究と女子教育に携わったヒト。(注)
本書は岡潔の残した多くのエッセーからチョイスされたものと、岡婦人が岡潔の人柄を書いた文章を1冊に編んだもの。
こんな飯屋で読み始め。
本書の対象とする読者は、せいぜい加減乗除を使うことぐらいで日々を過ごしていける、私のような者。
だから、編者の選んだ岡潔の文章には、数式も数学用語も出てこない。
『数学する人生』という題名だが、〝数学する〟話はない。
年にレポート用紙で1000枚を使って考えることを2年。
それで20枚くらいの論文を1本。
数学者としての彼の仕事の風景は、それくらいのことしか書かれていない。
岡潔が文化勲章を受章した前後を〝騒動記〟として書いた夫人の文章に、岡潔の人となりが見える。
どこへ行くのにもノーネクタイ。
晴雨問わず、行き先問わず、いつもゴム長靴。
朝ごはんは、白米の上にトマトをのせて醤油。
食事時間は不定期、腹が減ったら食う。
ビールを1本か2本。
本夕、読了。
文化勲章受章者には年金が出るのだが、夫人が言うには、
「大学から十分な給金をもらっているので必要ない」
その十分な給金額とは、4万7千円。
1970(昭和45)年のことで、その年の国家公務員上級職の初任給で3万とちょっと。
60歳の国立大学教授のフトコロ具合の何とつつましやかなこと。
岡潔は夫人帯同でフランスに3年間留学している。
夫婦ともヨーロッパの文化にひたっていた時期があるが、日本に戻ってからの生活はいたって和式。
岡潔の日常は、上に書いた通り。
そんな彼に、夫人はソーサーにスプーンも付けてブラックコーヒーを出す。
(注)
邦人数学者で国際的業績をあげた二人をあげよと言われたら、高木貞治(たかぎていじ)とこのヒト。
岡 潔。
1901(明治34)年-1978(昭和53)年。
多変数解析関数論上の「三つの大問題」を解決した数学者。
って、私には何のことか(^^;
欧州の数学者らは、この「三つの大問題」が大変な難問であることから、一人で三つ全てを解決できるとは考えていなかったようだ。
それゆえ、Kiyoshi Okaとは、数学者集団を表す名称だと信じていたようだ。
コメント
夏目漱石 → 寺田寅彦 → 中谷宇吉郎
中谷宇吉郎の弟の中谷治宇二郎の系譜から、
≪…「心的内容の次第に明瞭に現れるるは注意にて」…≫で、
【ものの憐れ】に
言葉の【点線面】
モノのカタチの【□〇△】
数の言葉の【ヒフミヨ(1234)】
を結び付けたのは夏目漱石の「草枕」だ。
人の世は〇の出入り三・四角 (知情意)
〇□なぞり逢いにて数創る (円周率)
群に生る点線面が融合す (数哲句・バーゼル問題)
投稿: 人の世を長閑す | 2021年12月20日 (月) 17:38
与作さん、こんにちは
ご無沙汰しています。
いやァー、こんな古い記事へのコメント。
どうもありがとうございます。
漱石逝去の歳は49。
人生50年の時代の49ですから、長いとは言えなくとも短い人生ではなかったものと。
にしても、「草枕」の執筆と「坊ちゃん」の執筆が同じ年。
列車の連結・解結ではないけれど、自由自在に頭を働かせることができた人だったンでしょうねェ。
四角は平方
裏返して、その逆数和が
創られた数の円周率の平方の6分の1
と、バーゼル問題の解に至る。
逝去の歳が49かァ。
長閑な人生ではなかったのでしょうねェ。
投稿: KON-chan | 2021年12月20日 (月) 21:55
数学の基となる自然数(数の言葉ヒフミヨ(1234))を大和言葉の【ひ・ふ・み・よ・い・む・な・や・こ・と】の平面・2次元からの送りモノとして眺めると、[数のヴィジョン]になるとか・・・
岡潔数学体験館で、自然数のキュレーション的な催しがあるといいなぁ~
投稿: 縄文文明の残り香 | 2024年7月14日 (日) 14:49
ご無沙汰しています。
お変わりなくお過ごしでしょうか。
平面も立体も動きも扱えるベクトルが高校の数学課程から外されたことはありませんが、行列は高校数学課程に組み込まれたり外されたり。
今現在、行列はどのような扱いになっているのでしょう。
岡潔の業績について、私には語るナニモノもありません。
でも、ああいう天才と向かい合ってお茶を飲む1時間、いやいや15分でも持つことができれば、1000日くらいは気分良く過ごせそうだなァ、とは思いますね。
投稿: KON-chan | 2024年7月14日 (日) 20:13