『海に生くる人々』を読む
栗林商会本社ビル向かい、フェリーターミナルすぐ西の入江臨海公園内にある石碑。
青色の文字は、『海に生くる人々』。
遠景の山は、私の山歩きトレーニングフィールドの室蘭岳。
私の立っているこのあたり、石炭を運搬船に積み込んでいたところ。
積み出し量の最大記録は、年間500万トン。
背中が貨車操車場と石炭ヤード。
夕張などがある石狩炭田から200輌以上も連結された石炭輸送用無蓋貨車(セキ3000)の、全長2キロにもなる列車で運んできた石炭の卸し場。
いずれも、〝かつては〟という枕言葉が付く。
室蘭ー横浜航路の石炭運搬船に乗り組んだ経験のある葉山嘉樹(はやま よしき)が、『海に生くる人々』を創作している。
初版は、1926年。
1955年には岩波書店から文庫が出版されているが、ここ30年ほどは絶版。
が、この2月、岩波書店の「2020年〈春〉のリクエスト復刊」された27点のうちの1点として本書も出版された。
たまたま立ち寄った札幌の紀伊國屋でそれを目にし、購入したという次第。
こんな喫茶店で読み始め。
いわゆるプロレタリア作家が書いたものだから、
・資本が悪、労働が善の紋切り型ストーリー展開
・説明的な記述で、尖った激しい表現
・教訓的結末
が書かれていて、100ページも読んだら放り投げることになるに違いない。
ンな気分の、読み始めだった。
実際、その通りで、
・資本が悪、労働が善の紋切り型ストーリー展開
・説明的な記述で、尖った激しい表現
は、予想以上に更に説明的で、表現も更に尖って激しい。
しかし、結末は教訓的ではない。
本夕、読了。
舞台は石炭運搬船、2千トン。
最大速力、9ノット。
外防波堤築堤前の室蘭港。
真冬の出港。
大黒島をかわしてからは、冬の波にもまれる。
真冬の夜間入港。
大黒島灯台からの警報音で、フルアスターン(全速後進)と緊急投錨で行き足を止め、大黒島への衝突をまぬがれる。
翌朝まで港外停泊。
大黒島南の浅瀬がすぐそこに見えるところで投錨していたことを知る。
読みづらい本だった。
それでも、途中で放り投げることもなく、何とか最終ページまで読み進めることができた。
大黒島付近の冬の海を、私も知っているからだろう。
コメント