『名残の山路』を読む
ヤマケイ文庫(山と渓谷社)中の1冊。
読み出してから気付いたのだが、本著者が書いた やはりヤマケイ文庫中の1冊を私はこの春に読んでいる。
拙ブログに 『旅に出る日』を読む という記事にしたのがそれ。
著者は今年93歳。
その著者の、還暦から米寿に至るまでの紀行文集。
45編。
出版はこの夏。
こんな飯屋で読み始め。
交通公社に勤め、旅雑誌の編集者歴の長い著者。
有名な門前町・城下町を訪れる話もあるが、だが、名所・旧跡を案内する本ではない。
歴史・伝説・民話、そして自然にひかれての、極めて個人的な興味から訪れる土地を歩く話。
それらの歴史・伝説・民話・自然は、広く知られたものではない。
その土地・郷土の歴史・伝説・民話・自然。
旅先に北海道はない。
北海道は若過ぎて、歴史・伝説・民話をきっかけにして訪れるような土地ではないからだろう。
自然さえも若い。
観光客のために用意されている展望台・駐車場から先は、若い自然がヒトの侵入を拒む。
自らを〝歩く旅人〟という。
特急の止まらない駅に降り立ち、1時間、4時間。
いや、時には半日。
半日かけて歩いて着いた宿場町には、気の向く宿がない。
と、さらにその先の宿場町へ。
峠を歩き、今は使うヒトの少ない街道を歩く。
雨に降られることもあるが、降られるがまま。
本夕、読了。
再訪の地もある。
それが、30年振り、50年振り。
半世紀前に訪れた時の印象を書いているのか、ついさっき訪れた時の印象を書いているのか。
文章からは、過去のことなのか現在のことなのか判別できない。
本書の紀行文は、〝時〟の縛りから解放されている。
著者は言う。
立ち止まることが〝旅〟だと。
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