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2019年9月10日 (火)

『戦艦大和の収支決算報告』を読む

以下、本書内の記述に従い、貨幣表示は当時のままで。
また、米国ドルは当時のレートを用い、日本円に換算して示す。

1894(明治27)年、日清戦争時の帝国の年度国家予算は1億円に届かない。
戦費は2億3240万円、国家予算の230%。

1904(明治37)年、日露戦争時の帝国の年度国家予算は3億3000千万円。
戦費は18億2630万円、国家予算の550%。

1941(昭和16)年、太平洋戦争開戦時の帝国の年度国家予算は86億円。
日中・太平洋戦争を通じての総戦費は2036億3634万円、国家予算の2370%。(注)

Balance-of-accounts 
こんな喫茶店で読み始め。

帝国が計画したのは、世界最強の砲弾を撃てる大砲を積み、その世界最強の砲弾を受けても沈められない装甲を持つ船を4隻建造すること。
1番艦 大和
2番艦 武蔵
3番館 信濃 (建造開始後に空母に設計変更)
4番艦 紀伊 (建造中止)

当時、帝国海軍の艦艇1トン当たりの単価の見積額は、
潜水艦 6450円
駆逐艦 5050円
戦艦  2800円

体積当たりの装備密度の高い艦艇、すなわち、小さい割には強力な機関を載せ、重兵装した艦艇のトン当たり単価が高い。
1艦当たりだと
駆逐艦 秋月  1209万円
空母 大鳳 1億0120万円

労働集約型工程のもと船が造られる。
よって、労働単価が安かったことが大きく効いて、帝国では同クラスの艦艇を米国の半分程度のコストで建造している。

で、大和の建造費は、1億3780万円。
〝世界最強の軍艦を手に入れるにしては安いものだ〟と帝国海軍高官が考えたのかどうか。

本夕、読了。

主砲弾1発1920円 を1170発
25ミリ機銃弾1発26円 を150万発
これだけで、4000万円。
そのほかに、副砲弾 1620発、高角砲弾 13500発 を積み込んだ大和が、襲撃してきた米国海軍機の編隊に向けて主砲を撃ち始めたのが、1945(昭和20)年4月7日12時32分。
世界最強の軍艦のはずの大和が戦ったのは、2時間に満たない。
14時23分沈没。

同戦闘による米国の損失は、
航空機  180万円
航空魚雷 500万円

本書の副題は、『建造費・維持費・戦費から見た戦艦大和』。
そして、本書名は『戦艦大和の収支決算報告』。

決算は大

(注)
2019年度の日本の国家予算は101兆4571億円。
国防予算は5兆2574億円、国家予算の5%。

ちなみに、2019年度の米国の国家予算は480兆円。
国防予算は73兆円、国家予算の15%。

米国大統領が同盟諸国に対して、
「米国は世界警察の立場を降りる。 米国に頼るな。 自分の国は自分(の銭)で守れ」
と言うのは道理がある。

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コメント

こんにちは。
いやはや驚くばかりの金額で。
その分国民が疲弊しておりましたが。
それから見ると小生なんぞは、少額の
電動リールを買うのも、買おうか?、止めようか?
と考えてしまいます( 一一)。


昭和20年8月15日で、やっとこ武家主義が
終りましたワ・・・。

投稿: きーさん | 2019年9月11日 (水) 08:39

きーさん、こんにちは

イカを2ハイか3ハイあげたら大満足し、100mでも150mでも手巻きで対応している上品な釣師もいます。
100号以上のオモリをぶら下げて、ジィージィーやって二桁・三桁の釣果を当然とする釣りをやるのは品位に欠けます。
私は後者の下品な釣師(^^;
電動リール必携です。

ところで、日清戦争では、戦費の5倍になる賠償金を清国から得ています。
日本の工業化のスタートは、この賠償金によるもの。
この賠償金を使って、近代製鉄所を建設しています。
官営八幡製鉄所がそれ。
今につながる日本製鉄八幡製鉄所ですね。

しかし、日露戦争では帝国はアップアップ状態。
日本海海戦から先の戦争を継続する余裕はありませんでした。
総軍事力で帝国を圧倒するロシアに持久戦に持ち込まれるのを恐れた帝国政府は、米国に仲介を頼み講和を急いでいます。
それで、樺太の南半分などは得ましたが賠償金請求は放棄しています。
で、国家予算の5倍を超える戦費の償還に大変苦労しています。

余談ですが、私は日露戦争で戦場となった203高地に登っています。
また、乃木・ステッセルが停戦条約を結んだ水師営会見所にも訪問しています。

戦争は宣戦布告で始まりますが、終わりは分かりません。
なので、開戦から終戦までを1会計年度とする『臨時軍事費特別会計』という制度が帝国にはありました。
予算の蓋がしまるのは終戦後。
その間、大蔵省どころか帝国議会のチェックも受けることなく戦費を使えたわけです。

再び余談。
大和の弾薬庫空調設備は、当時の標準技術の冷媒にアンモニアを使うものに替え、フロンを使うもの。
大阪金属工業(現、ダイキン)が担当しています。
フロンの製造特許は米国のGMが持っていましたが、大阪金属はこれを無断使用。
戦後、そのことがGMの知るところとなり、ダイキンは多額の特許侵害賠償金を支払わされています。

巡り合わせというべきか。
フロン代替冷媒のR32(HFC)の製造特許を持つのは、ダイキン。
ダイキンはこのR32製造特許を無償開放してますね。

投稿: KON-chan | 2019年9月11日 (水) 18:47

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