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2019年7月19日 (金)

『明治生まれの日本語』を読む

「寝る時刻は?」と、問われれば、
「11時に寝ます」とか 「10時には寝ます」 と答える。
「9時間寝ます」とは、言わないだろう。

「寝る時間は?」と、問われたときも、
「9時間寝ます」とは、言わないだろう。
「11時に寝ます」とか「10時には寝ます」 と答えるはず。

しかし、
眠る時間は?」と、問われたら、
「11時に寝ます」とか 「10時には寝ます」 とは言わない。
「6時間寝ます」とか「8時間寝ます」と言うだろう。

What time is it now? を、日本語に置き換えたとき、
「今、何時間」とは言わないだろう。
「今、何時」のはず。

Photo_20190716230801 
こんな飯屋で読み始め。

〝時間〟と〝時刻〟は違う概念。

しかし、What time is it now? を、
「今、何時」 とも 「今の時刻は」 とも 「今の時間は」とも 「今の時間は何時」 とも言える。

日本では〝時刻〟を表すのに、〝時(とき)〟か、〝刻(こく)〟を使っていた。
例えば、五ツ時(いつつどき)とか辰ノ刻(たつのこく)のように。

八ツ時(やつどき)なら、
丑ノ刻(うしのこく:今の午前2時頃)、あるいは 未ノ刻(ひつじのこく:今の午後2時頃)となる。

1872(明治5)年の品川・横浜鉄道開通仮開業時の「鉄道列車出発時刻及賃金表」を、本書で見ることができる。
それに書かれている〝時刻〟の表現は、

横浜発車 午前八
品川到着 午前八 三拾五分

〟を使うことで、八ツ(やつどき)とカン違いさせない配慮がされている。
〝字〟 が 〝時〟 に定着するのは、1903(明治36)年の国定教科書の尋常小学読本発行後。
結構な〝時間〟がかかっている。

なお、午前8時35分30秒 を 中国語では 上午835分30秒 と表す。

日本語の〝とき〟の単位の〝秒〟と〝分〟は、中国語からきているのは間違いないだろう。
しかし、〝時( )〟は中国語からのものではない。

〝時()〟が明治生まれの日本語であることを本書で知ることができる。

本夕、読了。

江戸から明治になって国を開いた日本に、西欧文化が流れ込む。
その頃の日本人が、たくさんの言葉を作る。

〝she〟が〝彼女〟として定着する過程にも、かなり時間がかかっている。

〝彼女〟も中国語にはない単語。
〝彼〟は〝他〟、〝彼女〟は〝她〟。
ガールフレンドの意味の〝彼女〟なら〝女朋友〟。

ところで、外務省によれば、
United States of America は アメリカ合衆国
United Mexican States は メキシコ合衆国
と表記するのだそう。

中国語でも同じで、
United States of America は 是美利坚(アメリカ)合众国
United Mexican States は 墨西哥(メキシコ)合众国
と書く。(〝众〟は〝衆〟の簡体字)

〝state〟は〝州〟
〝衆(众)〟は〝多くの人〟
の意。
だから、
United States of America は アメリカ合
United Mexican States は メキシコ合
とすべきだというヒトがいる。

〝合衆国〟が中国語からの借用語なのか、はたまた日本生まれなのか。
本書には、これに関する説明はない。

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