『短編アンソロジー 味覚の冒険』を読む
題名は『味覚の冒険』だが、こんなものを食べた、あんなものを食べた、という食レポではない。
本書は、14人の作家による14本の短編小説集。
こんな飯屋で読み始め。
本書14編の小説には、全て〝食う〟シーンがある。
その全てが不思議、奇妙、不気味。
ゲテモノだとかグロテスクだというものを口にするのではなく、〝食う〟に至る雰囲気、気分。
〝食う〟ということは、命を維持するための必須行為。
その当たり前のことを、不思議さ、奇妙さ、不気味さを感じさせる話にするのだから、舞台設定がそもそも普通ではない。
その描写に14人の作家が筆力をふるうのだが、そのどれもが、作家が力を込めて話を作ったという感じがしない。
作家にとって、〝食う〟話とはその程度のことなのだろう。
本夕、読了。
本書の題名は、初め 『悪食な奴ら』というのが候補だったそう。
本書中に出てくるのは、〝悪食〟よりは むしろ〝美食〟。
〝美食〟を書くのは〝悪食〟を書くより ずっと難しいと思う。
〝飢餓〟は文学になっても、〝満腹〟はさて。
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