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2018年2月 9日 (金)

『胎児の世界』を読む

うぶ湯のタライの中から見た光の記憶から始まる小説を読んだことがある。
それは新生児の世界。

本書は うぶ湯をつかう前の世界。
胎児の話。

 

Fetusこんな喫茶店で読み始め。

宇宙の終わりは必然なのかもしれない。
しかし、宇宙の創成は必然だったのか奇跡だったのか。

著者は解剖学者。
だから、本書は自然科学的に筋の通った理屈を積み上げて章がすすむ。

生命の終わりは必然なのかもしれない。
しかし、生命の始まり、これは奇跡だ。

本著者の研究過程で得た知見を語る表現は、自然科学者の言葉ではない。
うぶ湯のタライの中から見た光の記憶から始まる小説を書いた作家をはるかに超える筆力。
だが、奇跡を語るのに、ヒトの持つ表現力の程度でどうして足りよう。
どう表現していいのか分からない。
でありながら、どうあっても表現しようとする著者の気持ちが伝わってくるページが続く。

本夕、読了。

何十億年も前。
古代の海から生命が出現し、あるものは海にとどまり、あるものは陸に上がり、あるものは陸から再び水に戻った。
鶏卵の観察から、
サケの卵の観察から、
ヒトの胎児の観察から、
いずれも発生の初期段階は ごく似ていることが知られている。
本書を読む時間は、生き物の悠久の歴史をさかのぼってゆく時間だ。

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