『なぜ中国人は財布を持たないのか』を読む
中国がIT(スマホ)決済最先進国となる それ以前、ほんの数年前のこと。
中国人は財布を持たなかった。
財布はポケット。
だから、中国でピン札を見ることは難しい。
手にするのは、使い込まれて醤油で煮染めた色になりかけ、マイクロファイバーのメガネ拭き並みに柔らかくなった紙幣ばかり。
紙幣決済時代の中国人は財布を持たなかった。
今、IT決済時代の中国人は財布を持つ理由がなくなった。
こんな喫茶店で読み始め。
著者は中国の大学への留学経験のあるフリージャーナリスト。
現代中国は、時系列を振り返ってそれに沿って現象を考えることができる速度より、はるかに動きが速い。
例えば、自動車販売台数で世界一だった米国を中国が抜いたのは'09年。
今現在、中国における自動車販売台数は米国の1.6倍。(注)
といった速度感。
中国では、すでに、日本経済の発展や社会インフラの発展をモデルとして横目でも見ていない。
すでに世にあるものは、中国においても ただちに獲得可能で、そこに行き着くのに段階が必要だとは考えていない。
そして、それは正しく、リープフロッグ(一足飛び)。
本著者も、ああだった、こうだったのような振り返りはしない。
本書は、〝財布を持たない〟ということに象徴される現代中国の世相レポート。
たった今の中国の、現場・現物・現実が書かれている。
現場・現物・現実が書かれているのだが、現場・現物・現実それだけ。
分析・解析らしい著述はない。
リープフロッグによる現場・現物・現実なのだから、振り返る時系列がないとも言えるし、分析・解析のしようがないとも言える。
だからなのだが、私でも本書の内容を理解できる。
だからなのだが、私でも読後にもの足りなさを感じる(^^;
本夕、読了。
日本の最高額紙幣は10000円。
中国の最高額紙幣は 100圓(元)。
この下に、50・20・10・5・1圓(元)紙幣が発行されている。
1元が17円くらいのレートだから、10000円は580元くらい。
中国に入国して、当座使い用にと10000円を元に両替すると、最低でも100元札5枚と50元札1枚の6枚の札が渡されるから、こちら側の財布は大きくふくれることになる。
本書では、100元が1000円くらいの感覚だと書いてあるが、私の実感だと、100元で3000円から7000円くらいの使いでがある。
アメリカンドリームを言われた時代が長く続いた。
チャイナドリームを言う時代も、長く続くだろう。
(注)
自動車販売台数で、中国が世界一の米国を抜いたのが'09年と書いたが、同じ年、生産台数でも当時世界一だった日本を抜いている。
今、その生産台数は日本の3倍を超える。
コメント
中国へ毎月行っている友人も、スマホでほとんど
決済していると言っていた。
まさか、都会から離れた町や村では
そうはいかないとは思いますけど
その波は確実にやってくるのかな
中国の経済がこのまま続くのかしら?
投稿: oxy | 2018年1月14日 (日) 10:09
oxyさん、こんにちは
サクランボの季節には路上販売の店があちらこちらに出るのですが、そんなところでもスマホ決済可です。
社会主義国ですから〝物乞い〟はいないはずですが結構見ます。
本書によれば、この〝物乞い〟が恵んでもらうカネもスマホで決済できると。
かつて米国がくしゃみをすれば何とかかんとか、と言われましたが、今や、米中の経済動向が世界経済を左右しますね。
中国の経済は成熟という方向で減速・安定するのでしょうけれど、右肩上がりそのものはまだまだ続くと思います。
投稿: KON-chan | 2018年1月14日 (日) 16:55