『文藝春秋 9月号』を読む
月刊誌『文藝春秋』や『中央公論』には、ウィスキー・万年筆・ホテル・靴などの〝広告〟に、高かつ好センスを感じさせるものが多く掲載されていた。
それらはすっかりなくなったが、〝広告〟のレベル低下はない。
掲載されている〝広告〟は、以前のものも今のものも、あらためて〝広告〟するまでもない すでに世に広く知られ、かつ質が高いとの評価が定着しているものばかり。
あらためて〝広告〟するまでもないのに、あらためて〝広告〟するのは、プライドゆえ。
よく考え、よく練られていることを感じさせる〝広告〟だが、そこに苦労とかヒネリといったイヤらしさを感じさせない。
気持ちがいい。
こんな飯屋で読み始め。
'17年上半期芥川賞受賞作『影裏』が掲載されている。
最初の行が、
〝勢いよく夏草の茂る川沿いの小道。〟
と、釣りの始まり。
出竿先は、北上川支流の生出(おいで)川。
最後の行が、
〝釣り竿をわたしは畳み、蜉蝣(カゲロウ)が無数に水面を上下している生出川沿いを上流に向かって歩き始めた。〟
と、釣りの終わり。
舞台は岩手県。
作中、掛かるのは、
ヤマメ
イワナ
アユ
ウグイ
ニジマス
ソイ
アイナメ
マコガレイ
題名の『影裏』は〝電光影裏斬春風(電光影裏に春風を斬る)〟による。
釣師(のつもり)のオイラが読者。
だから、目にとまるのは、釣りの表現のみ(^^;
ただし、『文藝春秋』を開く時点で、〝釣り〟から離れないと、ページが進まない(^^;
〝釣り〟は本作にとっては小道具に過ぎない。
〝釣り〟でなくて、〝ジョギング〟でも〝サーフィン〟でも話は成り立つ。
なお、〝釣り〟でなくて、〝登山〟だと話は成り立たない。
本夕、読了。
本作内の固有名詞が、具体的。
ヴィッツ・ジムニー・コールマン・ゼンリン・氷結・南部美人・シャチハタ等々。
〝軸の細い青焼きの山女魚鉤〟という語が出てくる。
塗装で青いのではなく、焼き色が青のハリ。
カレイを掛けるためにヤマメ針を使うデキル釣師を知っているが、青焼きハリなのかしらん。
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