『山女日記』を読む
著者は湊かなえ(みなと かなえ)。
登山を趣味にするヒト。
こんな喫茶店で読み始め。
山のエッセー集かと思って手にしたのだが、山を舞台にしたオムニバス形式の短編小説集。
舞台となるのは、順に、
妙高山(新潟県:2454m)
火打山(新潟県:2462m)
槍ヶ岳(長野・岐阜県:3180m)
利尻山(北海道:1721m)
白馬岳(長野・富山県:2932m)
金時山(神奈川・静岡県:1212m)
トンガリロ(ニュージーランド:1978m)
涸沢カール(長野県:2300m)(注)
本書内に、以下のような場面はない。
・冬山
・自位置を地図上で確認できなくなる
・ガスに巻かれてルートを失う
・滑落する
・目的地に着く前に日が沈む
・クマに出会ったり、ハチに刺される
・テントを背負ってのソロ歩き
・GPSや電子コンパスに道案内をさせる
・もう一歩も足が出ないほどに疲労する
・浮き石が転がる
要するに、困難な登山や遭難はない。
だが、
・雪渓を歩く
・風は吹く
・雨も降る
だから、サンダル履きのザックなしでポケットに手を突っ込んで歩けるような登山もない。
私の読書経験に小説は ごく少ない。
小説の、読みどころ、感動どころを知らない。
だからなのだが、本書の最初の〝妙高山〟の編を読んでも面白いともつまらないとも感じなかった。
が、・・・
〝火打山〟の最後の文章、
「2462メートルの頂から、叫ぶ言葉はもう決めてある。」
これにウルッと・・・
〝槍ヶ岳〟の最後の文章、
「やはり、槍ヶ岳山頂は一人で目指したい―。」
これにウルッと・・・
〝利尻山〟の最後の文章、
「言葉を継ぐ必要はない。
雨が降っても一緒にいたいと思える人であることを、誇りに思う。」
これにウルッと・・・
〝白馬岳〟の最後の文章、
「返す言葉を思いつかない代わりに、私も(夫に)写真を送ろう。
細いロープで私(母)を引っ張りながら歩く七花(娘:小5)のたくまし
い後ろ姿を―。」
これにウルッと・・・
〝金時山〟の最後の文章、
「最高の登山デビューじゃないか―。」
これにウルッと・・・
〝トンガリロ〟の最後の文章、
「そろそろ私も、新しい景色を切り取りに行こうか。」
これにウルッと・・・
〝涸沢カール〟の最後の文章、
「それでもまた、彼女と登れば、誰かの晴れのお裾分けがもらえるん
じゃないだろうか」
これにウルッと・・・
描かれているのは、山を登るオンナのココロ。
創作、作り話。
しかし、著者の登山経験は豊富。
山の天気、汗、給水は登山者でなければ書けない描写。
本夕、読了。
〝クスリ〟がよく効く体質の私。
19時以降にコーヒーを飲むと、朝まで 眠れない。
食あたりくらいなら、正露丸服用2錠で直ちに解消。
歯痛は、セデス服用1錠で12時間解消。
39℃。 小児用バッファリン服用1錠で直ちに解熱。
波にも酔う。
なのに、オカに上がれば5分以内に回復。
多分、そんな体質からくる作用なのだろう。
本書内の登山靴にザックを背負って歩く女性にすぐに同化し、
山の高さを感じる、
山の遠さを感じる、
山の風を感じる、
山の寒さを感じる、
自分に気付く。
あァ、オイラはこんなにもヒトの書いた文章に心を開ける人間だったのか、と。
告白しよう。
オイラ、本書を読みながら、何度か涙ぐんだりもしたのだった(^^;
(注)
カールとは氷河の通過した跡。
U字型地形。
涸沢カールは穂高岳中腹。
コメント
白馬岳はスキーの白馬の事でしょうか?。
だとすると、若い時スキーで白馬にいった事
あります。
北海道とは違う雪質だったと記憶しております。
しばらくスキーもしておりませんが・・・。
投稿: きーさん | 2017年9月27日 (水) 20:41
きーさん、こんにちは
そうです、信州、北アルプス。
八方尾根スキー場とかいくつもスキー場があります。
白馬連峰は〝はくばれんぽう〟と発音するのが普通ですが、白馬岳は〝しろうまだけ〟と発音しますね。
白馬村は〝はくばむら〟だし、JR白馬駅は〝はくばえき〟ですが。
信州のスキー場は、首都圏の多くの大学スキー部が合宿に使うので、北海道のスキー場よりレベルの高い人が多いのだとか。
コブのピッチが北海道のスキー場より短いと聞きました。
バッジテストの検定も北海道よりも審査が厳しいようです。
海はイカツノからサバを外さなきゃならないし、サメ対策はしなけりゃならないし、結構 あれこれ頭を使いますが、山はいいですねェ。
何にも考えません。
空っぽになれます。
でも、沖でお会いしましょう。
投稿: KON-chan | 2017年9月27日 (水) 22:20