『エンジニアの野外手帳』を読む
(株)ドーコンは北海道を主な事業フィールドとする建設コンサルタント会社。
現社名に改称される前の社名の北海道開発コンサルタント(株)が、その業務内容をよく表している。
本社札幌。
ドーコンには土木・建築・農学・資源・経済などの専門家が500名ほど所属していて、彼ら彼女らはコンサルタントエンジニアと呼ばれている。
本書は、そのドーコンの各分野のコンサルタントエンジニアが書いたもの。
12の話題が12人によって書かれている。
こんな喫茶店で読み始め。
書かれているのは文献・ネットからの切り貼りなどではなく、野内外問わず、実際に調査した者にしか得られない〝知識〟・〝感覚〟・〝思い〟。
それらの質は大変に高いが、そこはそれ、書いたのはコンサルタント。
とても読みやすiい。
釣師としては、「潜水観察。冬も夜も潜って知った魚の社会」を、
登山者としては、「マントルからの使者。蛇紋岩の恵み」を、
面白く読んだ。
本州の道は人の踏み分け跡を徐々に整備していったもの。
北海道の道の成り立ちは、本州とは順序が逆。
まず道を作ってから、開墾する人を入れた。
ところが札幌は道が格子状に走る計画都市なのに、
・札幌駅前通は、真の南北から
・大通は、真の東西から
やや反時計回りにずれている
帯広市・池田町もそう。
それはなぜなのか。
・真狩の直線道路の先、正面に見えるのは羊蹄山
・十勝中部広域農道の長い直線の先、正面に見えるのはペンケヌーシ岳
・道道827号の直線道路の先、正面に見えるのは海別岳
などの写真が示される。
そういう風景になるのはなぜなのか。
これらへの見解を述べたのが、「山アテ道路。北海道の直線道路ミステリー」。
開拓当初の札幌の測量計画・測量要領の記録は残っていないようだが、著者の見解の通りだろうと思う。
著者の見解とは、測量にはトランシットを使わず〝磁石〟を用いたのだろうと。(注)
北海道の町並みは、〝磁石〟を使って造成されたに違いない。
本夕、読了。
なお、本書では、旭川に触れていないという、大きなヌケがある。
札幌・帯広・池田はドーコンのコンサルタントエンジニアの見解でいい。
が、しかし、〝磁石〟では旭川の説明ができない(^^;
京都(平安京)も計画都市。
格子状に配置された道は、ほとんど正確に東西・南北を走る。
平安京造営のモデルとした唐の長安も正確に東西・南北。
エジプトのピラミッドの4面も正確に東西南北に正対する。
これらは、星を使った測量を行ったのだろう。
旭川はこれとも違う。
(注)
北海道開拓の初期、測量に必要なトランシットは欧米からの輸入に頼っていて非常に高価だった。
国産のトランシットが得られるようになったのは、明治も末。
〝磁石〟の指す北は、真の北よりやや反時計回り(西)にずれる。(偏角)
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