『宦官』を読む
去勢。
イヌ・ネコ・ウシなら、タマを抜く。
中国皇帝に仕えた宦官(かんがん)。(注1)
彼らはタマだけではなく、サオも取ってしまう。
こんな喫茶店で読み始め。
副題は、『中国四千年を操った異形の集団』。
さすがの中国も、4千年前ともなると文字での証拠はなくなってしまうが、3千年前なら〝異形の集団〟の歴史を文字で追うことができる。
甲骨文に〝タマ抜き・サオ切断〟が現れるのは紀元前13世紀。
制度としての〝宦官〟が消滅したのは、清王朝崩壊の1912年。(注2)
その3千年の歴史を300ページちょっとの本にまとめたのは、中国の大学教授夫妻。
専門は、行政史・経済史。
対象としている読者は当然のこと中国人。
だから、中国で教育を受けたことのない者が、寝転がって本書を読み進めていくのはとても無理(だと思う)。
巻末に ごく簡単な中国史年表が掲げられているが、それだけを頼りに本書を読んでいける日本人はあまりいないだろう。
私だと、ほとんど全ページで、中国史と漢語を調べる必要があった(^^;
もっとも、この調べながら読むということが苦にならないほどに、中国史は大変に面白い。(注3)
本夕、読了。
タマを抜くので、男性ホルモンの分泌が激減する。
しかし、女性ホルモンの分泌が増えるわけではないので男から女への性転換を目的とするならば、タマ抜き後は、継続的に女性ホルモンの注射が必要。
もちろん、宦官がホルモン剤を得られるはずがなく、従って、宦官は中性人間。
性欲がなく恋愛感情も起こさないから、欲望の向かう先は、食・労働・知識・財力・権力など。
だから、宦官には、
美食
職務精励
蓄財
立身出世
治世への干渉
で目立つ人材が多い。
つまり、宦官にグータラはいない。
私のようなグータラ者は、タマを抜けば少しはビシッとするかもしれない(^^;
(注1)
刑罰としてや捕虜の奴隷化を目的としての去勢が行われたのは、中国に限ったことではない。
ただし、理由は分らないが、文化・制度の多くを中国に求めた日本なのに去勢の記録がない。
江戸城の大奥に相当するのが、中国の後宮(こうきゅう)。
そこに住む皇帝の側室の数は日本の将軍より桁が2つ多く、多い時は4万人に及ぶ。
皇帝・皇后と多数の後宮美女らの寝食をはじめとする あらゆる雑用を行うのが中性人間の宦官。
去勢の成功率はそれほど悪くはなく、悪い頃でも生死半々、のちには成功率が9割を超えている。
(注2)
後宮内で働くのは、自らの意志でタマとサオを取った宦官(自宮:じきゅう)。
10歳くらいで去勢する者が多い。
だから、清王朝滅亡時に まだ幼年だった宦官には、20世紀末まで生きながらえた者がいる。
宦官は現代史と言っていい。
(注3)
情報源としてのウィキペディアと百度百科が どの程度信頼できるものなのかは不明だが、この2つのネット事典がなければ、本書は読了できなかったと思う。
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