『北の保線』を読む
ある結婚披露宴でのこと。
新郎新婦の最後のお色直しが終わり、入場・キャンドルサービス。
お開きまで、あと20分。
式次第は、新郎新婦から両親への花束贈呈へと。
新郎の両親と新婦の母親が並んだ。
が、新婦の父の姿はなかった。
こんな喫茶店で、読み始め。
著者は2年間駅務に就いたほかは、東京・北海道で国鉄・JRの保線の担当者・管理者を務めたエンジニア。
北国と南国の保線の違いは、除雪作業と凍上作業の有無。(注)
本書の多くのページが、その記述に費やされる。
専門用語・現場用語への注釈が丁寧、組織・要員・工費・工程量・工程時間が具体的。
かつ、説明用の図・写真が充実していて、理解に困らない。
エンジニアの淡々とした筆が、読みやすい。
冒頭の話に戻る。
仲人さんがひな段からおり、宴の場に語りかけた。
話の概要は以下。
「○○線、A駅からB駅寄りCキロメートル付近で列車の脱線事故がありました。 新婦C子さんのお父上は当該保線区の責任者です。 対応の指揮を取るために、さきほど退席されました。それが、新婦のお父上がこの場にいない理由です。」
ほとんど同じ話が、『第6章 保線の思い出・エピソード』に「脱線復旧の神様」として載せられている。
もしかしたら、著者と私は同じ宴の席にいたのかもしれない。
本夕、読了。
(注)
〝凍上〟とは地中が氷結、軌条を持ち上げること。
〝凍上作業〟とは、それへの対応。
コメント
民謡で〝保線音頭〟というのがあります。
昭和53年発表の新民謡ですが。
中々大変な仕事らしいのが歌詞から伺えます。
投稿: きーさん | 2016年11月14日 (月) 22:13
きーさん、こんにちは
本書にも、『線路つき固め音頭』という作業唄が紹介されています。
我等の鉄道 ヨーイトサーノー
命と宝の ヨーイトコラサー
・・・
というもの。
確実な証拠はないようですが、日本最初の鉄道〝新橋-横浜〟敷設の現場監督だった英国人のジョーンズが作業員に唱和させたという説が有力なようです。
保線は外仕事。
ポイントが動かない、雪に突っ込んで列車が立ち往生、線路が変形して脱線なんていうのは全て保線員の責任。
特に北海道は冬が厳しいですから、大変な仕事ですね。
投稿: KON-chan | 2016年11月15日 (火) 00:06