『魚の文化史』を読む
著者は、伊勢神宮の神職だった人。
〝魚の〟とあるが、貝・イカ・タコ・カニ・エビ・ナマコ・クジラも含まれる。
こんな喫茶店で読み始め。
古事記・日本書紀の山幸彦・海幸彦神話には釣りの話が出てくるし、七福神中唯一日本由来の神の恵比寿は右手に竿、左手にタイを持つ。
『魚の文化史』という表題から、そんな話から始まる魚釣りの文化史でも書かれているのかとページをめくったのだが、あにはからんや。
本格的な民俗学書。
文献・資料の収集や現地調査にも執筆にもかなりの年月がかかったとある。
調査の範囲は実に広い。
巻末の「魚の文化史年表」も「索引」も充実していて、時間を要したというのが確かにうかがえる。
奈良の薬師寺の薬師如来像の足の裏には、2尾のサカナが刻まれているそうだ。
サカナが彫られている仏足跡はインドにも日本にもいくつもあるようで、仏教とサカナは相性がいい。
しかし、仏教では生臭いものを避けるが原則で、仏前にサカナを供えたりはしない。
一方、日本では古代から吉事には、生臭(なまぐさ)は欠いていけないものだったようだ。
なかでも、アワビは生臭の代表格とされていたらしい。
今に伝わる熨斗(のし)は〝のしアワビ〟のことで、元来は薄くそいだアワビを乾燥させたもの。
伊勢神宮では、年間で生アワビだけでも4千個以上、乾しアワビなども含めると5千個以上のアワビが神饌(神前供物)に用いられるという。
みたいな話が、ブリ・タイ・サケ・クエ・タラ・フナ・イワシ・イカ・タコ・オコゼ・サバ・ボラ・アユ・コイ・クジラ・イセエビ・ナマコ・カニ・ウツボ・オコゼ・カツオ・ウナギ・ナマズ・ハマグリ・サメ・エイ・アンコウ、まだまだ続く。
ぎっしり書き込まれている。
著作に時間がかかったという。
読むにも時間がかかった。
今夕、読了。
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