『タブーの漢字学』を読む
中国人と仕事をすると、こちらがノートいっぱいにメモを取っているのに彼(女)らのノートは3割ほどしか埋まらない。
表意文字である漢字の力だ。
以下、便宜上、日本で使う漢字を〝漢字〟、中国で使う漢字を〝中国字〟と表記する。
漢字だと、例えば〝数〟は〝すう〟・〝かず〟・〝かぞ(える)〟といくつも読み方がある。
中国字は、一文字、一音(節)。
といっても、発音数は千以上。
それよりずっと多く、中国字の総数は10万以上もあるようで、だから、同音異字がたくさんあることになる。(注)
長い歴史のある文字・言語だから、残されている資料も多い。
近代以降の文献は除くとして、多分 日本の一万倍は文献が残っている。
こんな喫茶店で、読み始め。
著者は、中国語学者。
上で書いたように中国字文献は大変な量が残っているので、中国語を専門とする言語学者の調査範囲はとても広い。
中国字辞書から漢方医学書、料理本も。
表題でいう〝タブー〟とは、例えば〝死〟。
崩御なら、天皇・皇后
巨星墜つなら、吉田茂・毛沢東
逝去なら、庶民にも使う。
〝死〟をストレートに〝死〟と表現しないのは、日本も中国も同じ。
いや、中国の規定を日本人が使っている。
天子(皇帝)は、崩
諸侯(地方の王)は、薨(こう)
大夫(高級官僚)は、卒
士(一般官僚)は、不禄(ふろく)
その他、不諱(ふき)、物故、不在など。
これらに注目して資料を読むと、上下・敵味方の関係が解けてくる。
征夷大将軍を天子(天皇)から与えられているので、徳川家康は諸侯相当。
よって彼の死去は、薨去(こうきょ)と表現される。
〝斃る(くたばる)〟は文字の中に〝死〟がある。
〝死〟以下の表現だろう(^^;
本夕、読了。
(注)
今の中国人は、小学校入学前には500字くらいの読み書きができるそうだ。
日本語はカタカナを持っているので、computer をコンピュータと表記できる。
中国字は文字自体に意味があるので、そうは簡単にいかない。
権威ある人・部署なりが、computerは電子計算機と表記するとか電脳と表記するとかと定めないと、表記も発音も定まらない。
但し、表記が決まれば、一文字一音だから、発音は自動的に決まる。
難しいのは、固有名詞。
米国大統領バラク・オバマ(Barack Obama)を、見拉克・奥巴馬
米国大統領候補ドナルド・トランプ(Donald Trump)を、唐納徳・川普
と表記することを決めるのは、政府の仕事。(実際には、マスメディアが先行することが多いようだ)
ドナルド・ダック(Donald Duck)は、唐納徳・達克 と表記するから、Donaldイコール唐納徳かというと、それほど単純ではない。
McDonald'sにはDonaldが入っているが、表記は麦当労。
商標などは、企業の側が決めるのだろう。
コメント
数日前、室蘭岳遭難の一報に驚き、まさか?
ブログの更新を待っておりました、杞憂にて候。
まちがっても海、山にて斃れることの無きよう、御身専一にて候成。
投稿: 3 | 2016年3月 2日 (水) 23:14
与作さん、こんにちは
町から近いので入山口までのアクセスが容易なだけで、冬の山はやはり冬の山です。
彼は昨年358回も、この山の頂に立っています。
冬にこの山に上がる主要ルートは4つあって、彼の使うコースは最短ルート。
ここ、登り詰めるのは何ということはありませんが、山頂から高度を100メートルほど落とす間が広い笹原。
斜面に雪が乗って、さらに暴風で雪が舞ってその上に猛雪が降って加えて雲が降りてきてガスってということになると、コンパスを睨みながら歩かないとワケが分からなくなります。
そんな状態でなくても、800メートルから上は世界が違いますね。
大変な数の入山経験のある彼なので、コンパスを持たないで入山していたのかもしれません、
私は町なかを歩いていてもワケが分からなくなる人間。
読書にコンパスを求めているのかもしれません。
読んでいるのは方角の狂ったワケの分からない本ばかり(^^;
私の頭はとっくに斃れています(^^;
投稿: KON-chan | 2016年3月 3日 (木) 12:29