『文学の中の鉄道』を読む
鉄道は大量のヒト・モノの移動を目的とする機関なので、鉄路が結ぶ各点はヒトの活動地。
また、タイムテーブルのもとにヒト・モノが移動・離合集散するから、孤独・雑踏、出会い・別れが時刻ごとに発生・消滅してゆく。
劇的さも平凡も、複雑も単調も、病気も健康も鉄道の風景に現れて消えてまた現れる。
だから、文学・映画・歌謡のしばしば重要な舞台、あるいは添景となる。
本書は、作品中に鉄道が現れる日本の文学作品を初出年順に並べ、解説を加えたもの。
こんな喫茶店で、読み始め。
扱われている文学作品は、
正岡子規『はて知らずの記』 1893(明治26)年
から、
有川浩 『阪急電車』2008(平成20)年
までの60作。
1作品に割かれるのは5ページ。
5ページは短い。
しかし、あなどるなかれ。
これが、思いのほか読むのに時間を食う。
夏目漱石、松本清張、三浦文子など有名作家の作品が取り上げられているのだが、私の既読本は1つもなし。
そのことは、しかし、本書を読む上での障害には全然ならない。
著者は、鉄道史研究家・旅行ライターの原口隆行。
〝旅〟という あれもこれも書きたくなるテーマを、限られたスペースに記事にすることを日常にしているプロ。
5ページの範囲内で、作品のあらましに加えて鉄道の話が見事におさめられている。
なお、情景が目に浮かぶ読書とするには、読む側に義務教育レベル程度の日本地理の知識があるといい。
地理(だけじゃないけれど)に弱い私は、中学生用地図帳をそばに置いて本書を読み進めた。
本夕、読了。
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