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2015年12月 7日 (月)

『戦闘機パイロットの空戦哲学』と『スクランブル』を読む

両書の著者は違う。
しかし、経歴は両著者とも同じで、いずれも防大出身の航空自衛隊の戦闘機パイロットだった人。

前著者の乗機は、F86・F4。
後著者の乗機は、F86・F104・F1・F15。
前著者が5歳年長。

前書に書かれている各国空軍戦闘機パイロットの年間飛行時間を並べてみると、
マレーシア空軍      200時間
オーストラリア空軍    190時間
ニュージーランド空軍   180時間

前著者の戦闘機パイロット生活30年における総飛行時間は4200時間。
年間の飛行時間は140時間。
後著者は24年。
総飛行時間は4600時間だから年に190時間となる。(注1)
近年になって、諸外国の戦闘機パイロットと同程度の飛行訓練予算が空自に付いたということだろう。

これが米海軍の艦載戦闘機パイロットだと年間飛行時間が250時間くらいのようで、練度の高さとそれを支える予算の潤沢さがうかがえる。

抑止力と打撃力の圧倒的優位さの維持を任務とする者と哨戒と防衛を任務とする者の違い、日米安保の関係。
それがパイロットの飛行時間の多少からも見えるが、そのことを分析するのは拙ブログの芸風に合わぬ(^^;
なので、以下はサロン話。

 

Book【画像:上】
こんな喫茶店で前書を読み始め。
1ヶ月ほど前に読了。

【画像:下】
こんな喫茶店で後書を読み始め。
読了が今夕。

スクランブル待機は5日ごと。
スクランブル出動があるらしいことの多くは、レーダーサイトから事前に連絡があるようだ。
待機室のスクランブル要員が、警報音が鳴るやいなや読んでいた雑誌を放り投げて乗機に向かって駆け出す、というのは緊迫感を表現する広報用の演出かもしれない。

とは言っても、スクランブルは2機編隊での出動なので、いざ出動時に僚機を待ちぼうけさせるわけにはいかない。
だから、待機シフト中は膀胱が一杯になった状態で搭乗することがないよう、上空で腹が減って血糖値が下がってしまわぬよう気を使った時間を過ごすようだ。

話は変わるが、仕事を持つきっかけは、〝興味をひかれて〟とか、〝ヒトに勧められて〟とか〝成り行きで〟とか〝家業を継いで〟とか色々あろうが、戦闘機パイロットを仕事とするに至ったきっかけはそういったこととはいくらか違う(ように思う)。

多分、彼らは〝鳥になりたい〟とか〝天駆ける騎士になりたい〟といった幼児のような(と表現しても失礼でないだろう)憧れで、その道に進んだのだろうと思う。

戦闘機は普通の人であれば困難なく操縦できるように作られている、と書いてある。
「オレ達は普通だよ」と言いたいのではなく、「だから、普通以上でなければ墜とされるンだよ」ということの婉曲表現だろう。

スクランブル出動時、彼らは〝仕事〟として乗機に向かって駆けるのではなくて、〝鳥〟、〝天駆ける騎士〟になるため駆けるのだと思う。(注2)

(注1)
自衛官は公務員だから、年間勤務日数は250日前後。
190時間を250日で割ると、45分強/日。
実際にはこんな細切れなフライトはしないだろうから、1日おきの頻度で1フライト90分、5日に3日の頻度で1フライト80分といったところか。
F15で言えば、機内タンクの燃料だけだと航続できるのは巡行飛行でも1時間。
外部タンクを付けても2時間ほどらしい。
だから、1フライト1時間半程度という見積りは、それほど的外れではなさそうだ。

(注2)
〝仕事〟としてではなくて、と書いたが・・・
以下はヤラセだったのかもしれない。

湾岸戦争終結時、厚木基地にもどった空母艦載機パイロットをTVカメラが追う。
TVクルーが彼に、「危険な任務でしたが、ご無事で何よりでした」みたいなことを。
駆け寄ってくる奥さんと学齢前の娘。
その娘を夕焼け空に高くかかげ、そのパイロットが言ったのは、“My job.”

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コメント

年間200時間と出ているのを見て
燃料はどのくらい使うのかな?が一番最初に頭に浮かんだ。おそらくリッター50~100mくらいでしょうから
戦闘機のような機体を手に入れても、燃費が悪くて
維持できない。満タンだと5~7000リットルとか入るから50万円くらいかかる。もっともセーバーとかの古い機体だともっと燃費が良さそうだけど、イーグルあたりで
Aバナーを使うと、あっという間にガス欠になりそうですね。10分も飛べないでしょうね。私のリモコンヘリみたいだなぁ!!

投稿: 川染 利夫 | 2015年12月13日 (日) 06:53

川染さん、こんにちは

F15だと、持って上がれる量は、機外タンクも含める2万リットル弱くらいのようです。
燃料はケロシンですからリッター単価は100円しないと思いますが、それでも2百万くらい掛かるんですねェ。
飛べるのは、巡航2時間で2000キロ。
リッター当たり100メートルの勘定になります。

千歳の航空祭で、F15がアフターバーナーを焚いて垂直に上がって行くのを見たことがあります。
毎分400も500リットルも燃焼させているのでしょうけれど、きれいに燃焼して黒煙が見えません。

リモコンヘリはエネルギーが電気ですから、長時間飛ばすのは難しそうです。

投稿: KON-chan | 2015年12月13日 (日) 17:55

イーグルは20000Lも入るのですか!
税金かからないから、リッター50円もしないでしょうから。。とはいえ途轍もない維持費になりますね。

投稿: 川染 利夫 | 2015年12月14日 (月) 07:04

我が艇も、シケで大波を一枚一枚乗り越えての航海を強いられると、リッター400メートルくらいしか走れていないようです。

日本の場合は訓練空域が遠いので、その往復に燃料を使い実訓練時間を多く取れないと聞きました。
米空軍と共同訓練をやると、自衛隊機が勝つそうです。
米韓共同訓練だと、韓国空軍機が勝つそうです。
どうもそれは米軍の友軍へのサービスのようらしく、この世界にも色々と気を使うものがあるのですね。

1時間50万で計算しても、200時間で1億。
大変な世界です。

投稿: KON-chan | 2015年12月14日 (月) 08:16

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