『火山入門』を読む
人生、たかだか100(百)年。
地球の現年齢は4,600,000,000(46億)歳。
人生100年の46,000,000(4千6百万)倍。
『観測史上最悪の』とか『いまだかつて経験したことのない』とか。
ヒトの文明を10,000(1万)年前までさかのぼることはできない。
ヒトが人生目いっぱい100年でつないでも100代さかのぼれずに終わり。
〝観測史上〟・〝いまだかつて〟なんぞと言う時間的奥行きは、その程度しかない。
だから、『観測史上最悪の』事態、『いまだかつて経験したことのない』事態に、この先 我々が遭遇するのに何の不思議があろう。
46億年の時間の中に、そんな〝事態〟が何度あったことか。
こんな喫茶店で読み始め。
NHK出版新書。
副題は、「日本誕生から破局噴火まで」。
著者は、北大教授・同地震火山研究観測センター長・国立極地研究所長などを歴任した地球物理学(地震学)の碩学。
新しい本で、初版発行は今年の5月。
7月ですでに第3刷。
内容も新しい。
一昨年始まった海底噴火の西之島新島、昨年噴火した御嶽山はもちろん、今年になって山体の膨張が観測され出した桜島の件にも触れられている。
地球は冷えきった球体ではなく、深部は高温・高圧、溶融状態。
この先も冷えて固まることはなく、不動のはずの大地(地表:プレート)は動き続ける。
その移動速度は1年にセンチのオーダーがあり、観測にかかるほどの量だ。
思いっ切り少な目に1年に1センチと見積っても、100(百)年で1メートル。
10,000(1万)年だと100メートルも大地が動く。
東北地方太平洋沖地震では、5.3メートルも牡鹿半島が動いている。
地震や噴火の発生確率やその規模は、百万年前も 現在も 百万年後も 何も変わらないのだ。
百万年。
いや、著者の使う単位はもっともっと小さい。
「いま安定しているように見える場所でも、千年とか万年とかの単位では大地震や大噴火が起きることは十分にありうる」と。
'13(大正2)年の桜島。
異変を感じた村長が、気象台に何度も問い合わせている。
「噴火はしないのか」と。
そのたびに気象台から出される回答は、「噴火するという十分なデータを持っていない。噴火はしない」
翌年、島が大隅半島と地続きになるほどの大噴火と大地震。
逃げ場のない島内で多数の死傷者を出す惨事に。
桜島の小学校には、大きな石碑にこんな言葉が記されているという。
「科学を信じてはいけない、危険を察したら自分で判断して逃げるべきだ」
小学生に〝科学を信じてはいけない〟とは、興奮のあまりに口走ったとしか思えない、何と大人気のない言い方だろう。
小学生に〝自分で判断して〟とは、そもそも大人が子供を相手に使うべき言葉ではないだろう。
ところで、〝災害〟とは何か。
著者は言う。
〝災害〟とは、火山噴火や地震という自然現象と人間社会との交点で生まれるもの。
人間社会がなければ〝災害〟もない。
世界の陸地面積の0.25%しかない国土面積。
そこに、陸上にある火山の7分の1が集まっている。
日本のことである。
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