『釣師・釣場』を読む
シケだ。
こんな日、釣師が読むにふさわしい本だろう(^o^)
井伏鱒二著。
初版は1960年。(鱒二、62歳の時)
私が読んだのは、講談社文芸文庫'13年10月発行のもの。
小説家の書いた、釣りに関する12編の随筆集。
開高健や夢枕獏の釣り話本の先鞭に当たる。
書かれているのは、50年ほど前の話。
ところで、開高健も、この本を読んだことがあるようだ。
どころか、井伏鱒二と開高健にはかなり親密な交流もあった。
また、夢枕獏が読んでいるのは明らか。
なぜなら、この文庫の解説は夢枕獏によるもの。
札幌市内の、こんな喫茶店で読み始め。
50年前。
時代は、すでにダムができたり山奥深くにまで人が踏み入ったりで、〝昔はよく釣れた〟みたいなことを言う頃になっている。
フライフィッシングやルアー釣りが、珍しい釣りではなくなる頃だ。
川・海を問わず各地の名人を訪れては、釣技を問い、書き留める。
名人の技を実践することもあるが、うまくいかないこともある。
うまくいっても、1尾、せいぜい数尾を釣り上げたら竿を置く。
それを自ら〝隠居釣り〟と書いている。
彼の代表作のひとつ『黒い雨』は、この随筆集刊行後の著作だから、隠居を自称する歳でもないと思う。
我田引水を笑われるのを承知の上で、〝隠居釣り〟とは、〝上品な釣り〟の言いかえであると(^^;
結果が無釣・貧果であっても好釣・良果であっても、どんな釣り人でもその釣りに対して5時間は語り続けることができる。
文筆を業としている者ならば、100枚や200枚は書けるだろう。
『釣師・釣場』は、そういう調子からはずっと遠い。
釣りも静かだが、語りも静かである。
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