安航のために
私のような方向オンチな者でも、洋上で急に霧が出てきても、何とか帰ってくることができます。
それはGPSがあるからで、無線航法以前の時代は自分のいる位置を知るということは難しいことで、地文航法(注1)や推測航法(注2)や天測航法(注3)で自分のいる位置を知らなければなりませんでした。
(注1)陸地の目印を目視して自分の位置を知る航法。目標物が見えない時はどうにもならない。
(注2)既知の位置からの自機(船)の方位と速さ及びこれに風向(潮流)、風速(潮速)を加味して自位を推測する航法。
(注3)六分儀を使って、太陽、月、星の高度と方位を測定して自位を計算する航法。旧1級免許受験者なら、天測暦と天測計算表を使って、これを練習させられたはず。免許をもらう頃には、この方法をすっかり忘れている場合がほとんどだけど(^^;
北海に展開したドイツのUボートの生き残り艦長が書いたものに、昼間は姿を隠すため潜航しているから太陽を使った天測ができず、さりとて、夜間浮上して天測しようにも霧や荒天で星が見えずということで、何日間も自船位置を知ることができなかったというような話を読んだことがあります。
真珠湾に向かった機動部隊も航海途中で荒天に会い、この天測ができず、一時、艦隊の正確な位置を失ったことがあったようです。
まァ、船舶なら燃料、食料が尽きず、水深さえ十分有れば、何日間か自船位置情報を失ったとしても問題は小さいけれど、航空機となるとそんなに長い時間飛んでいられるわけではないから、ことは重大。
洋上を飛ばなければならない海軍パイロットは、推測航法や天測航法の技術に優れていたようですが、操縦も通信も航法も一人でやらなければならない単座機だけでの洋上の長距離飛行というのは難しかったようで、航法士(航空士)を乗せた飛行機が編隊を先導しています。
先導機の航法士が天測して位置を知り、海の波を見たり、夜間は発煙筒を落として風向・風速を測定したりして流される量を考えて機首を定めるわけです。
私のように、朝日に向かえばイカ漁場に行け、夕日に向かえば帰ってこられるみたいな航海法も天測航法と言えなくもないけれど、出入港や係留位置への接岸は、現在も目で見る地文航法によります。
これは航空の世界でも同じで、離着陸とタキシング時は一定の視程の確保が条件となります。
入出港は難しいということです。
さて、先日、函館から来られたYさんからエンルムマリーナ入出港マニュアル「chart.pdf」をダウンロードが送られてきました。
さすがというかやはりというか、『日本の空港』の編集・発行者の手になるもので、完璧ですネ。
ここではファイル容量を20%に落としたものを乗せています。
著作権はYさんにありますので、フルサイズ版をご希望の方は問い合わせて下さい。
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