読書

2024年7月16日 (火)

『黒部源流山小屋暮らし』を読む

北海道の山には、管理者(小屋番)が常在する山小屋(避難小屋)は ごく少数。
数えるには片手もいらない。
食事を提供する小屋は ひとつもないし、里から水を背負っていかねばならない小屋もある。
北海道には、高い山がないし、営業を成り立たせるほどヒトの入る山がないからだろう。

本州の山には、宿泊場所の提供だけではなく 食事も提供する山小屋が相当数ある。
そこを、水・食料・山況情報の調達場所、休憩場所、睡眠場所、荒天時の避難場所、縦走の拠点として山を歩くわけだ。

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こんな喫茶店で読み始め。

著者は美大出のイラストレーター。
また、山小屋の支配人でもある。
小屋は、北アルプスの薬師岳(やくしだけ:2900メートル)、水晶岳(2986メートル)に近い、黒部川の源流域の沢筋に建つ。
イワナ釣りが目的の客が多い小屋。
彼女自身も、毛バリによるイワナ釣り名人。
携帯の電波は届かない。
営業は、7月のアタマから、10月のスポーツの日の3連休までの3ヶ月半。

その間の彼女の自室は、1畳と1/3。
2.2平米(注)
ここに、絵描きとしての道具も、釣り道具も、書籍も、もちろん寝床も。

本夕、読了。

NHKラジオ第1の『石丸謙二郎の山カフェ』はナマ番組。
先月末、その番組にユーコン川の川下りから帰って来たばかりだという著者が電話でゲスト出演しているのを聞いた。
こんなヒトが采配する山小屋は素敵なのに違いない。

(注)
1人用山岳テントの多くは、1メートル✖2メートル。
2.0平米。
その狭さが不満だといって、ソロなのに2人用テントを背負って山に入るヒトは結構多い。
2.2平米よりは確かに狭いが・・・

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2024年7月13日 (土)

『人は、こんなことで死んでしまうのか!』を読む

本著者は、2万通の死体検案書を書いた監察医。
同著者の著作は、以前にも 『解剖学はおもしろい』を読む と拙ブログの記事にしている。

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こんな喫茶店で読み始め。

本書に載せられていた一例。
胃の不調を訴えたら、胃散を処方された。
それを飲み続けた2、3日後に、突然死する。
こんな時、死因の ほとんどは心筋梗塞なのだとか。

左肩が凝(こ)る。
こんな時も、心臓発作を警戒する必要がある。
著者は、
 心臓の不調は体のどこに どういうかたちで
 あらわれるのかわからない。
と書く。
〝放散痛(ほうさんつう)〟というようだ。

本夕、読了。

私は、ひとこと・ふたこと以上を交わした間柄だったヒトの突然死を経験している。
 たった ひと晩の闘病もへずして逝った20代。
 闘病もナニも、ラグビーコート上で くずれ、そのまま
 逝った やはり20代。
いずれも、先天性の疾患とも生活習慣病とも無縁。
かつ、人並み以上の基礎体力と運動神経の持ち主だった。

〝腹上死〟は〝腹上死〟。
〝腹死〟も〝腹上死〟というのだと本書。

人は、こんなことでも死んでしまうが、あんなことでも死んでしまう。

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2024年7月 7日 (日)

『残酷な進化論』を読む

昨年度の、
 「科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(理解増進部門)」
を受賞したのは、YouTuberのヨビノリたくみ。
彼が配信した番組の中には、カッコいい理系用語とダサい理系用語といった息抜きモノもある。

カッコいい用語の、
 1位は 赤の女王仮説
 2位は 生成消滅演算子
 3位は 宇宙際タイヒミュラー理論

ダサい用語の、
 1位は 箱ひげ図
 2位は ベン図
 3位は 井戸型ポテンシャル

ちなみに、箱ひげ図はExcelの統計グラフ内にテンプレートが用意されているし、ベン図は円の組み合わせ。
当然、Excelで描画できる。

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こんな喫茶店で読み始め。

このダサい用語の1位から3位までを決定する過程では、〝おばあちゃん細胞仮説(grandmother cell hypothesis)〟も候補にあげられていた。
おばあちゃん細胞仮説〟とは全然違う概念なのだが、本書には〝おばあさん仮説(grandmother hypothesis)〟が紹介されている。

チンパンジーの兄弟姉妹には年子がいない。
なぜなら、チンパンジーの授乳期間は4~5年と長く、それゆえ出産間隔も5~7年と長いから。
同じ理由で、ゴリラの出産間隔は4年。
オランウータンは7~9年。

ところが、ヒトの授乳期間は2~3年と短いだけではなく、授乳期間中にも次の子を産める。
父親・祖父母に限らず、血縁関係にない者さえも子育てに協力する生物的・社会的進化が あるからだろうと、本書の説明。

本夕、読了。

霊長類のメスは閉経しないで死ぬまで子を産む。
ヒトだけが閉経し、その後も長く生きる。
ヒトが共同で子育てしてきたことで得た進化の形質で、これを〝おばあさん仮説〟と言うそうな。

〝仮説〟だから、真偽不明。
本書では、ヒトは夫一妻に向かう進化傾向がありそうだ と書く。
しかし、〝おじさん仮説〟・〝おじいさん仮説〟が成立する夫一妻に進んでもいいような気がする。

また、ヒトは かなり頻繁に浮気をするので夫一妻に向いていない、という意見があるようだ。

父親が持つ遺伝子による子の遺伝性疾患の調査では、父子関係に客観性の高いデータが得られる。
上記調査によって、父子として暮らしてきたが、実はアカの他人の関係なのだと判定されるのは1~4パーセント。

浮気で子ができるのが、1~4パーセント。
火遊び浮気なら、私の根拠レスのエイヤーっ見積もりで、この20倍、20~80パーセントはあるのでは。

ヒトは夫一妻に向いていない、という意見に私は首を縦にふる(^^;

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2024年7月 6日 (土)

『旅をする木』を読む

ロシア・カムチャツカ半島の最南端にあるのがクリル湖。
面積は支笏湖とほぼ同じ。
この湖からオホーツク海に注ぐ川をサケが遡上する。
カムチャッカのヒグマは そのサケを食う。

誰が教えたのか、
星野自身が考えたことなのか、
「遡上してくるサケを狙っているので、この時期のヒグマはヒトを襲わない」

と、クリル湖畔に設営したテントで一人寝したのが本著者の星野道夫。

しかし、ヒグマが何を食おうとヒグマの気分。
星野道夫はテントを壊され、シュラフを裂かれ、ヒグマに食われる。
'96年のこと。
星野、43歳。

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こんな喫茶店で読み始め。

北海道に憧れ、やがてアラスカに憧れ。
憧れは、現実に。
アラスカに土地を買い、家を建て、その地に妻をむかえ、子を育てる。
写真を撮り、文章を書き、本を作り、TV番組を企画し、世界中を旅する。

それを33編のエッセーに。

本夕、読了。

神田の洋書専門の古本屋で、アラスカの写真集を手に入れる。
その写真集に載っていた北極圏内の村で、19歳の彼は3ヶ月暮らす。
白夜の地で、クマを狩り、アザラシを狩り、トナカイを狩り・・・

14年後、ある偶然から、彼はその写真家と会う。
「そうか、私の写真集が君の人生を変えてしまったんだね・・・
 で、後悔しているかい?」

星野は こう書く。
 人生はからくりに満ちている。
 無数の人々とすれ違いながら、私たちは
 出会うことがない。
 その根源的な悲しみは、言いかえれば、
 人と人が出会う限りない不思議さに通じ
 ている。

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2024年6月30日 (日)

『国マニア』を読む

著者は日本の大学で国際関係学を学び、香港(ホンコン)の大学へ。
卒業後は、香港で邦人向けの日刊紙・週刊誌・月刊誌の記者・編集者を勤めたヒト。

映画『人間の條件』では、工藤大尉が砲声の中、 
「国家とは何か」と叫ぶ。

かわぐちかいじのマンガ『沈黙の艦隊』では、原子力潜水艦の海江田艦長が、乗艦を「やまと」と命名する。
そして、「やまと」が国家として独立したことを宣言し、国連総会への出席を果たす。

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こんな飯屋で読み始め。

パナマ運河とその沿岸は、パナマ運河地帯と呼ばれていた時期がある。
1903年から1979年にわたってのことで、その間、米国が行政と司法の権限を持ち、必要とあらば治安出動できる権限まで有していた。
パナマは独立国だったが、パナマの憲法には、
 公安が乱れた場合には、米国が干渉できる権利
が明記されていた。

パナマ運河地帯は米国の海外領土だった。
その返還を承認したのは、カーター大統領(’77年)で、’99年末に返還を終えている。

本夕、読了。

香港・台湾とも国連加盟国ではない。
が、

 香港は、ホンコン チャイナの名で
 台湾は、チャイニーズ タイペイの名で
オリンピックに参加している。

本書に書かれていることを、そのまま引用すれば、
 国家が成立するための三要素とは、「領土・国民・主権」
 だと定義されている
とあるが・・・

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2024年6月22日 (土)

『花の百名山』を読む

北海道の山は低い。
最高峰の旭岳(大雪山)でも、2291メートル。
なので、その最高峰でも花を見る。

著者は、脚本家の田中澄江(1908年 ー 00年)。

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こんな喫茶店で読み始め。

著者は素晴らしい脚を持っている。
本書の『あとがき』は、著者 75歳の時に書かれている。
その時点での著者の山行数は、年に50座。

若い頃は、牧野 富太郎 (1862-1957)と共にした野歩きも多い。
したがって、本書で披露される植物の知識は正統で豊富。
本書内に書かれている植物名は900ほど。

本夕、読了。

著者は、3泊4日の行程で、夕張岳(1668メートル)・礼文岳(490メートル)・利尻山(1721メートル)と歩いている。
礼文岳の章に書かれている花の名は18。(注)
そして、礼文岳の章は、
 入り組む海岸線の美しさと、路傍の花々に圧倒された
と終わる。

私は思った。
 礼文島へ行こう。
 そして、路傍の花々に圧倒されよう。
と、・・・

(注)
礼文島にはアタマにレブンの付いた固有種が幾つかある。
その代表格が〝レブンアツモリソウ(ラン科)〟。

が、本著者は、この花については ひとことも触れていない。
山行とレブンアツモリソウの花期が合わなかったのだろう。
それを、
 山に来るのが早過ぎた
 山に来るのが遅すぎた
 残念だ
などと書いたりしないのが著者らしい。

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2024年6月 9日 (日)

『商人』を読む

著者は’16年逝去の永 六輔。

帯に、
 六輔ワールド、
 いよいよフィナーレ!
とあるように、本書は、『職人』・『芸人』と続く三部作の最後。

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こんな飯屋で読み始め。

著者の信条は、
 曲がったことのない街角を曲がったら
 旅が始まる
国内外アチラコチラを、ショルダーバッグひとつで歩いている。

本書には、散歩先・旅先で聞いた商人らの語録が並べられている。
そのひとつが、
 商店街だけじゃありません。
 楽な仕事なら後継者はいまっせェ、
 ・・・たとえば政治家とか、タレントとか

本夕、読了。

タモリが、笑いを取っていた さだ まさしネタは、
 ・しみったれた暗さ
 ・オチの見える歌詞展開

タモリが、笑いを取っていた 永 六輔ネタは、 
 ・しみったれた文化論
 ・オチの見える文化論展開

タモリのような回転の速い頭を持っていない私にでも、永 六輔の文化論の展開は見通せる。
例えば、本書名は〝商人〟だが、それに〝あきんど〟と ふりがはを付けたりとか。

本書内で、永 六輔は自身を〝売文商人〟と称している。
〝売文商人〟に ふりがな は付いていない。

〝ばいぶんしょうにん〟と読ませるのだろうか、〝だぶんあきんど〟と読ませるのだろうか。

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2024年6月 8日 (土)

『山嶽地帯行動ノ参考 秘』を読む

〝山嶽〟とは〝山岳〟のこと。

本書は、帝国陸軍教育総監部本部長名で各部隊に配布された原本をスキャンして復刻したもの。
原本配布は、帝国敗戦の20ヶ月前の1944(昭和19)年1月。
信州の松代町(現:長野市の一部)へ大本営及び政府機能を移す計画が持ち上がる頃。

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こんな喫茶店で読み始め。

実際に山岳地帯に部隊を展開してデータを採取、それをもとに本書がまとめ上げられている。
データ採取は、中央アルプス最高峰の木曽駒ケ岳(2956メートル)山域や富士山において。

現在の日本人男性の体重はもう少しあると思うが、本書では兵士の平均体重を60キロとしている。
で、かつぐ重量が43から49キロ。

本書に掲載のデータから、
 水平に1000メートル進んで、上がる高度が100メートル
 傾斜6°弱の時、
 行軍速度は時速2.7キロ
 なお、30分ごとに5分間の休憩

 水平に1000メートル進んで、上がる高度が500メートル
 傾斜27°弱の時、
 行軍速度は時速0.37キロ
 なお、15分ごとに5分間の休憩

本夕、読了。

上記は、体力・気力ともに優秀な者の数字と本書の記載。
また、山地では地図に記せない道の屈曲が多く、図上距離の倍になることを考慮しなければならないことが書かれている。

11時間歩いた後の備考に、
 部隊ハ 体力的二 戦闘ノ 余力ヲ 十分保持シアリ
とある。

私のテントを担いでの、1泊2日の縦走時で、背中のザック重量は16キロから18キロ。
11時間なんて歩かないが、全力を使い切る。
テント設営後は余力なし。

私は兵士になれない(^^;

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2024年6月 1日 (土)

『くすりの発明・発見史』を読む

ツムラの漢方内服薬は、
 1番の葛根湯(かっこんとう)
から、欠番なしで、
 138番の桔梗湯(ききょうとう)
まで。
このうち、
 68番の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
は、足がツった時に効く。
漢方薬は、その薬効がジワジワ・ユックリのイメージがあるが、68番の芍薬甘草湯は即効薬。
ツったフクラハギが元に戻るまでの時間は、服用してから30秒(実体験)。

さすがは、中国四千年。

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こんな喫茶店で読み始め。

熱帯病のひとつのマラリア。
その病原体は、マラリア原虫(ヒトの赤血球中に寄生 アンパン形状 直径5ミクロンメートル)で、蚊が媒介する。
マラリアに感染する者は、年に2.5億人。
死亡する者は、年に60万人。

マラリアの特効薬に、キニーネがあるのだが・・・

本夕、読了。

映画『インディ・ジョーンズ』は、考古学者のインディが古文書を読み解くことから物語が始まる。

文化大革命中の1967年、毛沢東が立ち上げたのは、マラリア薬の開発プロジェクト
中国全土から集められた科学者が まず やったのは、インディと同じ。
古文書の調査から。
で、紀元前2世紀に、マラリア患者に青蒿(せいこう:ヨモギ属の植物 和名はクソニンジン)が使われていたことを知る。
さすがは、中国四千年。

2015年のノーベル生理学・医学賞受賞者は、
 William C. Campbell
 大村 智
 屠 呦呦(Tu Youyou)
の3人。

屠 呦呦(1930年- )こそが、文化大革命の さなか、中国全土から集められた科学者のひとり。
そして、屠 呦呦へのノーベル賞授賞理由が、

〝マラリアに対する新たな治療法に関する発見〟

彼女の業績は、青蒿から2種の薬効成分の分離・精製に成功したこと。
 ひとつは、マラリア原虫の殺虫薬剤(注)
 もうひとつは、薬剤耐性マラリアや重症マラリアの基盤薬剤

(注)
本書での説明は ほんの数行なのだが、マラリア原虫が分離させたヘモグロビン中の鉄原子に作用する成分を発見している。
この殺虫原理はたいへんに興味深い。

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2024年5月26日 (日)

『水を訪れる』を読む

著者は建設省(現 国土交通省)のキャリア官僚。
恵庭の漁川(いざりがわ)ダムの計画前調査の責任者だったヒト。
水資源開発関係の仕事が長い。

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こんな喫茶店で読み始め。

静岡県東部の丹那トンネルには、在来線が走る。
それと並んで掘られている新丹那トンネルには、新幹線が走る。
いずれも約8000メートル。

丹那トンネル掘削時には大湧水があり、その排水のための抗は本坑以上に長い。
新丹那トンネル掘削時は、湧水を丹那トンネルに流して進める工法を採用している。
この抗を使って、現在も水を排水している。

本夕、読了。

著者は、中近東・東南アジア・中国を多く歩き、また、欧州、米国を歩き、その地の人々が、いかに水を得、耕作し、家畜を飼っているのかを語る。
本書の副題は、『水利用と水資源開発の文化』
文明が発祥は大河流域、文化が栄えるには水は不可欠。

前静岡県知事が、なぜ、リニアトンネル掘削によって漏洩する大井川の水の処置に ああこう言ったのか。
真意のほどは知らない。
初選こそ僅差での当選だが、二選・三選・四選は、県民の多数支持を得て当選している。
上記、丹那トンネル掘削でその直上の地の水が抜け、水豊かだった丹那盆地が乾いた地となり、人の生活が一変した記憶があったことも その理由なのかもしれない。

さて、前知事辞任による静岡知事選投票日は今日だった。
その結果はいかに。
ただいま、23時30分。
結果が出た・・・

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