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2023年11月

2023年11月26日 (日)

『海を渡った「ナパーム弾の少女」』を読む

1973年の「ニュース速報部門」のピューリッツァー賞は、〝The Terror of War(戦争の恐怖)〟。
ここでいう〝War〟とは、ベトナム戦争。
写されたのは、’72年6月。

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       ―― The Terror of War ――

〝The Terror of War〟 に写る裸の少女が〝Napalm Girl〟、すなわち「ナパーム弾の少女」。
’75年4月に、この写真が撮られた場所から北東へ40キロにある南ベトナム首都のサイゴンが陥落し、ベトナム戦争が終わる 。

後遺症をともなう重度のヤケドを背中と左腕に負って火煙から逃れる この時の少女は、9歳。 
南ベトナム軍による南ベトナム集落への、ナパーム弾(焼夷弾)の誤爆によって起きた事件だった。

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こんな喫茶店で読み始め。

資本主義(南) 対 社会主義(北)の 米ソ代理戦争。
北が南を押し切り、南・北ベトナムはベトナム社会主義共和国として統一され現在に至る。

のち、優秀だった少女は医学生となるが、その優秀さゆえ、社会主義政府によって反米・反帝の広告塔とされることになる。
 ・社会主義国のキューバへの留学
 ・同じくキューバに留学していたベトナム人と結婚
 ・夫婦してのモスクワ旅行からキューバへの帰途、
  乗り継ぎ地のカナダ最東部のガンダー国際空港で
  難民申請

本夕、読了。

このヒト、よくよく考えている。
〝亡命〟ではなく、〝難民〟としての立場で行動したのも考えた末。
カナダの市民権を得、キリスト教に改宗。

ベトナムの両親をカナダに呼び寄せることもでき、自身、ベトナムを訪問できる自由も得た。

火傷痕の治療は長いこと続き、昨年完治。
治療にあたったのは米国人皮膚科医で、治療期間5年。

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2023年11月25日 (土)

『食欲の科学』を読む

日がすっかり傾いた頃、ブラブラと流し歩きの飲食店街。
焼き肉屋・天プラ屋・ウナギ屋・焼き鳥屋などの換気扇から吐き出される匂いはたまらない。
大して腹は減っていないのだが。
食っていくかァ・・・

ところで、鼻腔の後ろ、つまり口の奥のノドのほうから入ってくる匂いを感じることができる生物は ただひとつ、ヒト。
ヒトだけが、空中に ただよう匂いだけではなく、口に入った食べ物の匂いも感じることができるンだと。

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こんな飯屋で読み始め。

ヒトは〝飢え〟を克服した。
で、現代人は、空腹を満たすために食う では終わらずに、ウマい・マズい・好き・嫌いを言い、時に過食・時に拒食する生物となった。
4、50年前までの〝食欲〟とは、心理学的・行動学的研究対象。
今のそれは、〝脳〟の問題。
〝脳〟が〝食欲〟を生み出し、〝空腹〟を感じさせている。

本夕、読了。

著者は、睡眠・摂食行動などの仕組みを解き明かそうとする医学者。
プロオピオメラノコルチンとかニューロペプチドYとかという用語が40も50も出てくる。
そしてそれらの物質が、どういう理屈で人体に作用しているのかを、素人に分かるようには説明してくれない。
素人に分かるように説明できるような理屈ではないのだろう。
と、いうことで、ンなところは読み飛ばし(^^;

本書、第5章の章題は「視床下部から行動へ」。
その第5章は、19世紀のフランスのロマン主義作家の言葉、
 恋は空腹で生き、満腹になって死ぬ
で始まる。
大いに同感(^^;

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2023年11月24日 (金)

『ウイルスとは何か』を読む

ポツンと何か。
そこから枝分かれして、さらに枝分かれして、・・・
と、今の生物界に至るまでの進化を〝樹木の形〟で表現する系統樹。
DNAの配列から系統樹を考える。
著者は物理を学んだ後、統計学を有効に使うことで系統樹を定める方法を研究したヒト。

と、書いた私自身が、何を書いているのか・・・
ハテ(^^;

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こんな喫茶店で読み始め。

ウイルスは、自分自身だけでは増殖(複製)できない。
生物の細胞内に自分の遺伝情報を侵入させることで増える。
なので、細菌・動物・植物を問わず あらゆる生物のゲノムに、多くのウイルスの配列が組み込まれている。
本書には、こう書かれている。

 何千万年も前の我々の祖先もウイルスに感染した。
 それらの中には重篤な病気を引き起こしたものも
 あったかもしれない。
 そのウイルスの一部が我々のゲノムの中に残って
 いるのである。
 「ウイルスの化石」である。

本夕、読了。

本書、私程度の者には読みこなせない(^^;
それでも、用語を調べ調べしながら 何とか最終ページまでたどり着いた。

分かったフリは最低。
分かったツモリは、いくらか罪が小さいように思うが、しかし、これも大いに危険。

本書を読んでも、分かったフリもできず 分かったツモリにもならない私は、タダのバカ(^^;

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2023年11月19日 (日)

『地平の月はなぜ大きいか』を読む

太陽と月の視直径は ほとんど同じで2分の1度。
30分。

360度さえぎるモノが ない砂漠や大洋。
地(水)平線に、太陽なり月なりをギッシリ並べたら720個。

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こんな飯屋で読み始め。

イタンキ浜に立って見る、水平線から昇る太陽。
大きい。
イタンキ浜に立って見る、水平線から昇る月。
大きい。

大きく見えるが、しかし、そう見えているだけ。
大きくはない。
高いところにある太陽も月も、低いところにある太陽も月も、視直径は変わらずに2分の1度、30分。

大きく見えているだけであることの直接的証明は簡単。
昇ったばかりで大きく見える月と、その何時間か後の月を写真に撮ればいい。

本書には、こう書かれている。
 人の眼、人の心が観た太陽と満月が、物理的大きさを
   はるかに超えたものであることに気付く。
 物と心がこれほど大きく食い違う現象は他にない。

この現象を〝月の錯視〟といい、2000年も前から知られていた現象。

本夕、読了。

本記事の冒頭で、
 地(水)平線に、太陽なり月なりをギッシリ並べたら720個。
と書いた。
ここで、簡単な思考実験。
〝地平の月〟が大きいのなら、ギッシリと720個並べられないことになる。
それは おかしい・・・
てなことを2000年前のヒトも考えたに違いない。

著者は『天体錯視の研究』で、学位を得た心理学者。
ただし、著者の研究によっても、大きく見える理由が完全に解決したわけではない。

竿を曲げ、リールのドラグを鳴らす型モノが掛かる。
偏光グラス越しに見る 水面直下まで上がったサカナはデカい。
ただし、デカく見えるのはバレたサカナ。

タモにおさまるサカナは なぜか小さい(^^;
あァ、〝水中のサカナ〟の錯視(^^;

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2023年11月18日 (土)

『気になる日本地理』を読む

義務教育で習う〝地理〟(高校で習う〝地理〟も同様)は、
 気候・地形・海流などの自然科学
 生活・産業・文化などの社会科学
と、学習範囲が広い。

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こんな喫茶店で読み始め。

東京都中央区には、日本銀行本店があり、三越日本橋本店があり、銀座がある。
勤務・購買・遊興の場。
だが、昼間人口こそ多かったが、夜間人口は減り続けた。
人々が、住む場を郊外に求めたゆえの〝ドーナツ化現象〟。
1997年、ここの人口は、7.2万人にまで減った。

バブルが はじけ地価が落ち着いたことと、高層集合住宅の建設が進んだことで、ここに住もうとする人が戻ってきた。
今年の人口は、17.5万人。

札幌・大阪・福岡の中央区でも、人口が増えていると本書。
〝アンパン化現象〟と いうらしい。

本夕、読了。

北海道人で、〝愛媛〟を書け、その県庁所在地が〝松山市〟だと言えるヒトの割合は どれほどだろうか。
同じく、北海道人で、〝茨城〟を書け、〝いばら〟と発音し、かつ、その県庁所在地が〝水戸市〟だと言えるヒトの割合は どれほどだろうか。

〝地理〟の学習範囲は、漢字の読み書きにまで及ぶ。

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2023年11月12日 (日)

『「利他」の生物学』を読む

〝利〟とは、我が身の不利をかえりみない、他者への奉仕・献身。
そもそも生物は、食うか食われるかの弱肉強食の〝利〟の生存競争を生き抜くことで、種をつないできた。
弱肉強食とまで言わずとも、弱者衰退・強者繫栄・適者生存。

本書は、そんな生命観の向こう側にある生物界の現実を見せてくれる。
生物にとっての〝利〟と〝利〟は表裏一体。
どころか、表表一体、裏裏一体。

副題は、
『適者生存を超える進化のドラマ』

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こんな飯屋で読み始め。

本書は、植物学の専門家と動物学の専門家の2名による共著。
本書で言う〝利他〟とは、〝共生〟のこと。

植物と動物の違いで一番大きいのは〝葉緑体の有無〟ではなかろうか、というのが2人の生物学者の一致した結論。

ところで、砂浜に棲む体長30マイクロメートル(0.03ミリメートル)の微生物の〝ハテナ・アレ二コラ〟。(注)

〝ハテナ〟は体内に緑藻を宿す(共生している)ので、体色は緑。
緑藻の葉緑体が光合成することのみが命の元。
なので、口はない。
〝ハテナ〟は植物。

本夕、読了。

〝ハテナ〟の繁殖は分裂によるが、緑藻は分裂しない。
よって、緑藻は〝ハテナ〟の分裂した一方に残る。
分裂した もう一方の〝ハテナ〟は、体内に緑藻を持たないので無色の体となる。
で、その無色の〝ハテナ〟には〝口〟が形成され、摂食を開始する。

ということで、〝ハテナ〟は、植物にもなるし、動物にもなるンだと(@@)(驚愕)

(注)

〝ハテナ・アレ二コラ〟の発見は、日本人。
名前の〝ハテナ〟は、日本語の〝はてな:?〟に由来する。

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2023年11月11日 (土)

『設計からの発想』を読む

著者は、航空工学者の佐貫亦男(さぬき またお)。

九七式戦闘機(キ27)のプロペラの設計者として有名。
また、気象庁採用の風向風速計を設計したことでも有名。

講談社ブルーバックスシリーズには9冊上梓。
本書は、その内の1冊。

このヒトのプロフィールを、〝工学者〟と同じくらいの比重で〝作家〟と並列して紹介している文章を多く見る。
実際、工学者として高い業績を上げたヒトだが、専門分野の知識をネタにしたエッセーや そのエッセーに埋め込まれたヨーロッパ紀行文やアルプス山行記が実にいい。

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こんな喫茶店で読み始め。(注)

表紙絵の、
 機首部分は、メッサーシュミット BF109
 胴体部分は、スーパーマリン スピットファイア
 機尾部分は、零式艦上戦闘機

副題が、『比較設計学のすすめ』。
まァ、そうガチガチした比較論が展開されるわけではないが、日本人が陥りやすい設計(デザイン)のチョンボがいくつも書かれている。

本夕、読了。

著者の佐貫亦男は四半世紀前の1997年に90歳で逝去している。
で、本書の初版は1979年。
米中が国交を樹立した年で、中国では改革・開放政策が始まった直後。
すべての中国成人男子が着ていたのは人民服。

そんな当時、そろそろ日本でも現在の中国を予見していたヒトはいた。
ただし、予見の程度は ウッスラと。

それよりも更に20年も前の、1957年。
国家主席が毛沢東の大陸で、中国の気象科学技術者らと2ヶ月間仕事をした佐貫亦男は、その時に感じたことを、こう ハッキリと書いている。
 比較設計学をもっとも深刻に適用する国こそ中国であることを
   確信する。
 中国人が(他国の)発想を「横取り」するとはとうてい考えら
 れない。
 この人たちは「学習」するにちがいない。
 「横取り」と「学習」は結果こそ同じだが、その態度には大差
 があり、獲得と習得の差別となって表わされる。

     ―――――――< 中  略 >―――――――

 その巨大な人口と、柔らかい頭で、成果は期して待つべきであ
 ろう。
 いくらかの心配は、文明文化の進展とともに頭を持ち上げるか
 も知れない中華思想、中国は世界の中心であるとの発想であろ
 う。

(注)
こんなところに・・・
って、ところにあった喫茶店。
西日の射すカウンター席に置かれたカップはウェッジウッド。
この喫茶店々主は、ハンドミルで挽いた豆でコーヒーを淹れる。

佐貫亦男なら、豆を挽くその音で、ミルがドイツのコマンダンテだと聞き分けるに違いない。
彼は、毎年のようにドイツを訪れ、かの地の小さな町を歩くのが好きだったという。

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2023年11月 9日 (木)

『宇宙・0・無限大』を読む

著者は、天文学者。
〝0〟は、数学で言う〝0〟ではない。
〝無限大〟は、数学で言う〝無限大〟ではない。

宇宙の始まりが、〝0〟ではなく
宇宙の終わりが、〝無限大〟ではない
という話。

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こんな飯屋で読み始め。

内容は義務教育レベル。
なので、私のようなモノでも、最終ページまで読み進んでいける宇宙論。
義務教育レベルに落として書かれた宇宙論ではない。
書かれていることが、私のようなモノにでも読み進められること だけ だということ。

だから、だけしか書かれていない こういった本を読んで、分かったつもりになってはいけない。

本夕、読了。

いけないのだが・・・

全ての物理量が揺らいでいた(正確な値が分からない状態)この世界 の始まり。
全ての物理量とは、位置・速度・エネルギーなど。
〝時間〟もそう。
よって、時間の議論は微小な幅を持つ。
著者は、
 宇宙の誕生時を確定できない。
 いえるのは、「この宇宙は誕生した」ということだけだ。
と書く。

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2023年11月 5日 (日)

『NATIONAL GEOGRAPHIC』を読む

『NATIONAL GEOGRAPHIC』日本版11月号。
特集は、〝荒らされる水産資源 世界の漁業が危うい〟。

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こんな飯屋で読み始め。

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アラスカ ブリストル湾。
川をのぼるためにこの湾にサケが集まる。
それを獲るために数百隻の漁船が網を流す。
上空には、魚群を追う水産会社のヘリ。

本夕、読了。

本書、11月号だが、発行年は1995年。
某施設の建て替えを機に放出したのが『NATIONAL GEOGRAPHIC』。
その一部をいただいた(^^) 

1995年は、Windows95が発売された年。
政権は 自社さきがけ の連立で首相は村山富市、衆院議長は土井たか子。
1月に阪神・淡路大震災、3月に地下鉄サリン事件が発生している。

〝荒らされる水産資源 世界の漁業が危うい〟というフレーズ。
当時、〝危う〟くさせている その原因はヒトだった。
今は、それに〝気候変動〟がプラスされる。

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2023年11月 1日 (水)

『つげ忠男コレクション』を読む

つげ 義春(1937年-)、つげ 忠男(1941年-)兄弟の作風・画風はよく似る。
よく似るが、ヒトこま目を見るだけで兄弟の作風・画風の違いが分かる。

今回読んだのは、弟のほう。

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こんなパン屋のイートインカウンターで読み始め。

12編が、
 釣り師無頼
 放浪渡世
 場末と与太者
 文学遍歴
の4つの章に分けられている。

玄関を出て、30分も歩けば出会えそうな話ばかり。
なのだが、300日間歩いても出会えそうもない話ばかり。
背景は、1950年から80年くらい。
読後に、爽快感とか納得感とかは感じない。
かといって、哀感とか虚無とかも感じない。

吉田類が解説を書いている。
これが力の入れ過ぎで、むしろ滑稽。

本夕、読了。

2018年の夏、つげ忠男と吉田類の網走の喫茶店 デリカップでの対談録が巻末に載せられている。
マンガの話は出てこない。
釣りの話、育った場所の話など。
ところで、この 網走の デリカップ には私も入ったことがある。
ジャズを聴かせる店で、カップはウエッジウッド。

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