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2023年9月

2023年9月30日 (土)

『物質理論の探求』を読む

18世紀、
 ニュートン  (英:1643年ー1727年)に始まり、
 プリーストリー(英:1733年ー1804年)
 ラヴォアジエ (仏:1743年ー1794年)
 ドルトン   (英:1766年ー1844年)
らによって近代科学が構築された。
本書に書かれているのは、その18世紀の科学史。

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こんな飯屋で読み始め。

著者は科学史研究者。
専攻は化学。

例えば酸素。
 リンゴの切り口が茶色くなるのは酸素ゆえ。
 鉄がさびるのも酸素ゆえ。
 紙が燃えるのも酸素ゆえ。
 呼吸は酸素を取り込もうとするがゆえ。
その酸素を、ヒトはどのように理解してきたか。

水、電気、熱、・・・
それらを、ヒトはどのように理解してきたか。

本夕、読了。

寿命は有限。
いいとこ100年しかないのが大変にくやしい・・・
5万年先、とは言わない。
5千年先、いやいや、2千年先でいい。
その2千年先の、人類の知性の到達点を見てみたい。

その時、
物質のその先の
 生命とは何か
 時間とは何か。
我々は、それを理解した過程の科学史を読むことができるかもしれない。

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2023年9月24日 (日)

『家裁調査官は見た』を読む

日本の法曹人口の概数は、
 弁護士が3万人強
 裁判官が2千8百人弱(注)

裁判を維持するのに必要な調査を行うなどして裁判官をサポートする仕事を行うのが、裁判所調査官。
 ・最高裁判所では、判事(地方裁判所裁判官)が就く
 ・高等および地方裁判所では、知的財産の専門家と租税の専門家が就く
以上の調査官が法律家なのに対し、
 ・家庭裁判所(以下、家裁)では、カウンセラー(臨床心理士・家族心理士
  など)が就く

いずれの裁判所の調査官も、国家公務員。

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こんな飯屋で読み始め。

本著者は、社会福祉学部教授として学生を指導しているが、家裁調査官として17年間の勤務経験を持つ。
家裁が扱うのは、家庭に関する調停や少年の保護事件の審判など。
だから、家裁調査官は、家庭、家族、少年少女、その親たちに深く立ち入ることになる。

本夕、読了。

家裁調査官が大事にすることは〝聞くこと〟だ。
と、本著者。
が、そのことだけではヒトは救えないことを〝苦い思い〟として本著者は書く。

覚せい剤を使った17歳の少女が、著者にこう訴える。
「チャンスが欲しい。(少年院ではなく)社会で立ち直りたい」

で、著者の裁判官への意見具申は、
「この子を少年院に送るのは適当ではない。
 適切な環境を整えて社会の中で更生をはかるのが最善である」

その1ヶ月後、変わり果てたように目はくぼみ肌の潤いを失った少女が言う。
「ヤクザっていうのはすごいよ。
 シャブやってる女の子がいるって聞いたら、そこへサーっと集まって来るん
 だよ。 本当にすごいよ」
と。
ヤクザに連れ回され、1日に7回も覚せい剤をうたれ そのたびに性交。

女子少年院に送られることで、少女は やっと適切な環境を得る。

(注)
検事はもっと少なく、2千人弱。

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2023年9月23日 (土)

『いろは俳句絵本』を読む

〝多芸は無芸〟といい、〝天は二物を与えず〟ともいう。
いや いや いや。
多芸有芸・多芸多才、天から二物どころか三物も四物も与えられたヒトはいる。
著者はそんなヒト。

著者の本職はナンなのか。
 一級建築士
 折り紙講師
 タップダンス講師
 茶道(大和遠州流)教授
 墨戯(水墨画)講師
で、陶芸家で俳人。

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こんな飯屋で読み始め。

〝い〟をアタマに
〝ろ〟をアタマに
〝は〟をアタマに
というふうに、一ページに一句。
いろは順に俳句が並べられている。

本書は、本。
も著者による。

器用なヒト。
というには、レベルが高い。

本夕、読了。

俳句だから季語がある。
札幌在住のせいか、使っている季語に多いのは〝冬〟。
〝秋〟は少なく三句のみ。
うち一句のアタマは〝ゆ〟。
 指先の
 トンボ一会(いちえ)の
 空へ発(た)つ

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2023年9月18日 (月)

『あなたの中の異常心理』を読む

著者は精神科医。
本書には、
 〝臨床医として現代人の心の危機に向かい合う〟
と、紹介されている。

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こんな喫茶店で読み始め。

著者が、
 〝現代人の心の危機に向かい合っている〟
ことはよくわかる。
〝心の危機〟とは、〝異常心理〟のこと。

もし、
 〝異常心理〟は回避しなければならない
また、ひとたび身に付いた
 〝異常心理〟は克服しなければならない
のであれば、その
 回避法(予防法)
 克服法(療養法)
が述べられてしかるべき。
が、本書に書かれているのは、〝異常心理〟の実例(分析)ばかり。
回避法・克服法は書かれていない。

本夕、読了。

本書の論調には大いに異議あり。

表面に行動として現れて、人間関係にトラブルを発生させる〝異常行為〟ならともかく、内面に隠れて 当人のみが知る〝異常心理〟をどうしろと。
そもそもが、心理に〝異常〟とか〝正常〟とかあるのだろうか。

ウラ・オモテのないヒト
カゲ・ヒナタのないヒト
見せられない 胸の内 のないヒト

ンなヒトの心理を〝正常〟と評価してよいものだろうか。
〝無害〟
とは言えるが。

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2023年9月10日 (日)

『大人のための「中学受験の算数」』を読む

著者は、物理学と指揮を学んだ理芸両道のヒト。
現在は、数学塾の主宰者。

本書で扱っているのは、小学6年生が中学入学のために臨む試験問題。
なので、数学の本ではなく算数の本。

掲載されている算数は24題。

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こんな喫茶店で読み始め。

中学入試の出題だから、小学校6年間で習う範囲を越えない。
が、中学卒業者、高校卒業者。
どころか大学卒業者でも、さらには解答時間を5倍に延長されたとしても、満点はおろか合格水準レベルにまで到達できるだろうか。

本書名、
 『大人のための「中学受験の算数」』
副題は、
 問題解決力を最速で身につける
そして、帯には、
 難関中の入試問題は、最高の教材だ!
とある。

これから中学に入ろうとする小学校6年生の問題解決力が、大人の頭の使い方の薄さを気付かせる。

本夕、読了。

本書によれば、〝難関中〟入学を目指す小学生の多くは、3年生の2月には入塾すると。
といっても、塾で文字式や方程式など、中学校で習う学習範囲の教授なんぞはしない。
塾で扱うのは、あくまでも小学校6年間の学習範囲内。
本書で教えられるのは、10の発想法・考え方。 その10とは、
 ①逆を考える
 ②情報を図や表にする(視覚化)
 ③差や比を考える(相対化)
    ・
    ・
 ⑧対称性を使う
 ⑨言い換える
 ⑩評価する

次は、ある中学校の入試問題。
Nada
図1で、
 入射角イと反射角アは等しい
と、鏡と光の関係が説明される。
 
図2で、3辺が鏡で構成された三角形ABCと、その内部を反射しながら繰り返し同じ経路を進む光の様子が示される。

そして、
 角ウを求めよ。
なんて、問題文には書いていない。
中学の入試問題、解くのは小学6年生。
問題文に書かれているのは、
 角ウの大きさは何度ですか。

⑧の、対称性を使って考えると、
 角ウの大きさは 28°

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2023年9月 6日 (水)

『美しすぎる「数」の世界』を読む

副題は、
 「金子みすゞの詩」で語る数論(注1)

著者は数学者。
〝数の新しい世界を知ることで、目の前が開けていく感じ〟
と、
〝金子みすゞの詩が気付かせてくれる、身のまわりの世界
 の不思議〟
に共通するものを感じると言う。

30編の金子みすゞの詩に、数論を重ねていく。

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こんな喫茶店で読み始め。

金子みすゞの詩の〝そらの いろ〟

 うみは、うみは、なぜ あおい
 それは おそらが うつるから。
   < 中 略 >
 だけど おひるの おひさまは、
 あおかないのに、なぜ あおい。
 
 そらは、そらは、なぜ あおい。

に重ねて、2次式と素数が語られる。(注2)

本夕、読了。

以下、本書の記述に従って。
ここでいう 2次式 とは 
 f(x)=x
2x+A
という形。
ここで、
 A=2,3,5,11,17,41
とすると、
x=0 から A-2 までの A-1個の連続する X の値ですべて素数値をとる。
たとえば、
 A=17
のときは、
 f(x)=2x+17
とおいて、
 f(0)=  17
 f(1)=  19
 f(2)=  23
 f(3)=  29
 f(4)=  37
 f(5)=  47
 f(6)=  59
 f(7)=  73
 f(8)=  89
 f(9)= 107
 f(10)=127
 f(11)=149
 f(12)=173
 f(13)=199
 f(14)=227
 f(15)=257
と、確かに素数が並ぶ。

 A=2,3,5,11,17,41
の その先は・・・
わかっていない。
本書には、ほかにも素数を生成する2次式が紹介される。
そして、著者は こう書く。
〝2次式の素数の問題を通して、限りなく深い世界が
 広がっているのを見ることができる〟

もっとも、私の理解力では、〝限りなく深い世界が広がっている〟のを見ることができたとは とても言えない。
しかし、〝限りなく深い世界が広がっている〟のを感じることはできた・・・
ような気がする(^^;

(注1)
〝数論〟とは、
 整数(・・・,ー3,ー2,ー1,0,1,2,3,・・・)
について研究する数学の分野。

(注2)
〝素数〟とは、
 ・2 以上の自然数
 ・正の約数が 1 と自分自身のみ
な数で、無限に存在する。
2 3 5 7 ・・・ 89 97 101 ・・・ 983 991 997 ・・・

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2023年9月 3日 (日)

『加害者家族』を読む

以前、新聞で読んだ記事。
車庫出し前進時、祖父が幼い孫をひき殺してしまう。
車庫入れ後退時、母親が幼い我が子をひき殺してしまう。
いずれも過失・事故。
ひかれたほうの孫・子は害者だが、ひいたほうの祖父・母を害者とは言いづらい。

不幸。
救いようのない不幸だが、責めるべき対象は自分自身のみ。
細く暗いが 歩むべき贖の道が見えないこともない。
そもそも、〝〟ではない。
ように思う・・・

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こんな喫茶店で読み始め。

本書で扱っているのは、そんな意図しない過失・事故の話ではなく、故意の殺人。
殺されたほうには、ひとかけらの落ち度もない。

殺されたほうは害者、その家族は害者家族。
殺したほうは害者、その家族は害者家族。

害者家族は もちろん不幸。
が、害者家族にも大きな不幸が襲う。

著者はNHKの報道番組ディレクター。
書かれていることは著者自身の取材による。

害者は 小学生5人(注)
内、2人死亡
害者は、14歳、中学3年生
害者家族宅の構成は、父・母・害者・弟が2人

本夕、読了。

警察は害者家族宅に起こるだろう不幸についても配慮する。
で、家宅捜索令状呈示の その前に、2人の弟を親戚宅に避難させることを提案・協力する。

それからの日々。
父親は苦しむ。
 弟たちはどうなるのか。
 誰が遺族に詫びに行くのか。
 捨てきれない 何かの間違いであって欲しいという思い。
 
そんな父親に担当警察官は同情を示しながら、
 「あなたたち家族への厳しいマスコミ報道、連日の調書取りなど
  で、つらく苦しい気持ちはわかります」
そして、こう質問する。
 「お父さん、2月10日と3月16日に殺された被害者の名前を
  ご存知ですか?」

父親は、被害者たちの名前を知らずにいたことを指摘され愕然とする。
そして、自分たちは、害者家族としての苦痛を決して口にしてはいけないことを知る・・・

(注)
1997年の神戸連続児童殺傷事件。
いわゆる、酒鬼薔薇聖斗(さかきばら せいと)事件のこと。

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2023年9月 2日 (土)

『職人』を読む

著者は永六輔。
著者が聞いた 職人の語りの数々が並べられている。
そのひとつは、
 残らない職人の仕事ってものもあるんですよ。
 えェ、私の仕事は一つも残ってません。
 着物のしみ抜きをやってます。 着物のしみをきれいに
 抜いて、仕事の跡が残らないようにしなきゃ、私の仕事
 になりません。

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こんな飯屋で読み始め。

人間国宝のおばァちゃんが織った紬(つむぎ:絹織物)。
それと、東レ・旭化成が織った化繊の紬の違いの判別はむずかしい。
人間国宝のおばァちゃんや沢村貞子が着れば、
 「これ、ヘンだなァ」
と思えるくらい。
らしいのだと、著者。

フライフィッシャーはバンブーロッドを手にしたがる。
釣竿職人の使う素材は竹。
が、敏感、折れないのはグラスファイバーの竿。
と、著者。

本夕、読了。

著者の大ベストセラーは『大往生』。
ところで、1997年、NHKTVドラマの『大往生』。
主演の森繁久彌が演じた役は 残らない仕事をする〝しみ抜き職人〟。

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