大学の解剖学教授職を定年退職後、電子顕微鏡を据えた私設研究所を開所。
そのヒトが、本書の著者。
対象を乾燥させ、さらに真空下に置くことが必要な電子顕微鏡。
そこまでの処理を必要としないのが、著者も その開発に参画した 低真空走査電子顕微鏡(低真空SEM:低真空 Scanning Electron Microscope 以下、SEM と記す)。
なお、低真空とは、大気圧(101325Pa(パスカル):丸めて 105Pa )から、下はその1/1000 までの範囲。
すなわち、105Pa から、下は 102Pa。
ちなみに、家庭用の電気掃除機で到達できるのは 104Pa くらいまで。
現在のSEMは、昆虫を生きたままで観察できるという。
こんな飯屋で読み始め。
予備知識として、
被写界深度が深いとは、
ピントの合う幅が広いこと。
絞れば絞るほど、暗くなるが、被写界深度は深くなる。
パンフォーカスが、その典型。
短いレンズ。
被写界深度が浅いとは、
ピントの合う幅が狭いこと。
絞りを開ければ開けるほど、明るくなり、被写界深度は浅くなる。
ピントの合った部分の前後はボケる。
長いレンズ。
SEMは、被写界深度が深い。
なので、表面の立体構造が よくわかる。
本書の第1章は、『なんでも覗いてやろう』。
著者に痛い思いをさせた尿管結石
自宅のタタミに生えたカビ
ウナギ(の幼生:レプトケファレス)のウンコ
等々。
レプトケファレスを解剖して得たウンコから、幼生期のウナギの食性を突き止め、ウナギの人工養殖への足掛かりとする。
本夕、読了。
本書最終ページに、著者の私設研究所に据えられた日立製のSEMの写真が載せられている。
そのキャプションが、
我が愛機
死ぬときは、この装置に もたれて死にたい
素敵な言葉だ。
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